この映画がアン・リー監督の初監督作品でした。
アメリカで映画を学び、監督した作品は少ないけれどなんだか映画祭やオスカーとか賞、取りまくりで、これが日本の監督だったら大騒ぎですねぇ。
推手というのは太極拳の手のひとつなのですが、描かれているのは台湾からアメリカへと息子を頼って渡った一人の父親の姿。
アメリカで博士号をとって、アメリカ人と結婚した息子。
父を呼んで同居するものの、父はアメリカの生活に慣れないし、嫁は小説家なので家にいるのですが、言葉も通じない外国人の義父と上手くいかない。
お互いがストレスをためて生活している様子が淡々と描かれます。
だから、ジャッキー・チェンとか派手なカンフーアクションの映画ではない渋い人間ドラマで、娯楽映画とは言えないですが、考えさせられるものがありました。
外国人と結婚する、国際結婚は難しいね。
そして、外国で仕事をし、結婚し、祖国から父を呼んでもそれが必ず成功と呼べるのか、というシビアな現実。
それはアメリカで生活、活動するアン・リー監督自身の思いもあるのかもしれません。
老いた親の面倒を子供が面倒をみるのは当然、というのは中国や台湾では気持強いだろうに、現代、しかもアメリカという外国ではなかなか通じない。
頑固だけれど、苦労人だからこそ他人や家族の苦しみもわかる、みたいなものが、お父さんからにじみ出ていてよかったですね。誰も悪くないのに上手くいかない、そんなこともあるのです。