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マイ・ブルーベリー・ナイツのkuuのレビュー・感想・評価

3.8
『マイ・ブルーベリー・ナイツ』
原題 My Blueberry Nights
製作年 2007年上映時間 95分
『2046』などで知られる香港の名匠ウォン・カーウァイが、アメリカを舞台に描くロードムービー仕立ての香港・フランス合作ラブストーリー。
恋人の心変わりで失恋した女性が、新たな恋に踏み出す勇気を得るため、自分探しの旅に出る。
ヒロインのエリザベスを演じるのは、グラミー賞受賞歌手ノラ・ジョーンズ。
ノラはこの映画以前に演技の経験がなかったたし、撮影前に演技のクラスをいくつか取って役作りをするつもりやったそうですが、ウォン・カーウァイは彼女の自然体を求めており、その必要はないと主張し撮影を開始したとのこと。
彼女の恋の相手を『アルフィー』のジュード・ロウが演じる。
カーウァイらしい独特のスタイリッシュな映像とヒネリの効いた構成が魅力。

恋人の心変わりで失恋したエリザベス(ノラ・ジョーンズ)は、元恋人の家の向かいにあるカフェに出入りするようになる。
毎晩、ブルーベリーパイを用意してくれるオーナー、ジェレミー(ジュード・ロウ)と話すことで、徐々に慰められていくエリザベス。
しかし、どうしても終わった恋を引きずってしまう彼女は旅に出る決心をする。

ウォン・カーウァイ監督の今作品は、悲しみや喪失感を抱えた5人の人間に焦点を当て、愛と喪失、そして傷を探求する、感動的な小さなトーンポエムのようでした。
歌手のノラ・ジョーンズは、映画初出演となるエリザベスを演じてて、彼女は、本当に大切にしていた男性に振られたばかり、初めて本当の傷を体験していることがわかる。
ジェレミー(ジュード・ロウ)が経営する小さなカフェで夜な夜な空想にふけり、彼は次第に彼女に恋心を抱くようになる。
しかし、彼女は忘れようと、そして癒されようと、魂を求める旅に出る。
そこで出会った数人の重要な人物たちは、それぞれに彼女に影響を与え、これまでの人生であまり遭遇しなかった人間の複雑な感情に対する彼女の視点を少し変化させる。
デヴィッド・ストラサーン演じるアルコール依存症の刑事は、自分を捨てた美しいが行きずりの妻(レイチェル・ワイスツ)のことを思っている。ストラスヘアンの演技は最高で、ハスキーな声だけで心の傷を表現し、苦悩が純粋に凝縮された親密なシーンは善き出来栄えでした。
リノで出会った無責任なギャンブル中毒のレスリーは、自分の心の傷をごまかすために奔放に生きている。
ジョーンズは、夢のような顔をしており、彼女の暗い瞳は、外的な出来事を徐々に理解していく肖像画を描くためのキャンバス。
ローは、早口でしゃべる彼の人格がボロボロであることを示すが、その下に、悲しみとジョーンズへの魅力の片鱗が見える。
メロドラマに迎合したり、感情的になって視聴者の手を握ったりすることなく、ただそこにあるものを気取らずに、そして、しばしば胸を締め付けるような正直さで見せてました。
夜行性のネオン、心にしみるクルーナー・チューン、遠い夢のどこかで登場人物を知っているような、そんな感覚に包まれました。
それくらい、この映画の雰囲気は個人的に引き込まれる作品でした。
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