優しいアロエ

アシク・ケリブの優しいアロエのレビュー・感想・評価

アシク・ケリブ(1988年製作の映画)
3.8
〈パラジャーノフと巡るカフカス行脚 その4〉

7/24(金)『火の馬』
7/25(土)『ざくろの色』
7/26(日)『スラム砦の伝説』
7/30(水)『アシク・ケリブ』✔︎

 パラジャーノフの遺作にして入門編。彼の手がけた主要4作品のうち、最も民話的で平易な物語と云えるだろう。わたしの身体に抗体ができ始めただけだろうか? いや、そんなことはない。出てくる人々がみな通俗的な感覚を持っている。パラジャーノフ作品としては珍しいことに、人物がなぜ笑っているか判る。なぜ踊っているのか判るんである。

 また、本作はパラジャーノフの集大成としても相応しい。吟遊詩人アシク・ケリブの家系絡みの悲恋を描くという『ざくろの色』×『火の馬』的物語であり、祖国グルジアで国家の介入なく製作することができたのは前作『スラム砦の伝説』との共通点となる。

 パラジャーノフは本作の最後に「亡きタルコフスキーに捧ぐ」と遺している。本作公開の2年前に他界したタルコフスキーもまた、ソ連の厳しい検閲から製作の拠点を国外に移した人物であった。
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