せーじ

ツレがうつになりまして。のせーじのレビュー・感想・評価

ツレがうつになりまして。(2011年製作の映画)
3.6
107本目。

「ただ、君を愛してる」で大失敗をしてしまった自分は、懲りずに宮崎あおいさんが出演している作品で面白そうなものを観ようとNetflixを彷徨っていた。そんな中で見つけたのがこの作品である。
大河ドラマ「篤姫」で共演をされていた、堺雅人さんと夫婦を演じているこの作品なら、間違いはないだろう!と、勢い込んで鑑賞。

しかし、残念ながらすごく惜しいし、微妙に感じてしまった作品でした。

もちろん二人の演技は素晴らしいし、題材やテーマも今取り上げられるべき内容であると心から感じるし、全体的にのんびりとした優しげな雰囲気が広がっているのもいいなぁとは思う。
思うのだけれども、主人公であるハルさんが「どのようにしてうつ病を患ったツレ氏を支えようと思い、実際支えることが出来るようになったのか」という、発端にして一番大切なところがしっかりと描かれていなかったのだ。
一応、ツレ氏がうつ病と診断される前に"兆候に気がつくことができなかった"という描写は入るのだけれども、そこは意外とサラッと流され、最初からすぐに彼女は、誰に言われるでもなくうつ病を患った人に対して理想であるとされるような対応を完璧にし始めてしまう。
その上、あろうことか彼女は"自分はネガティブ思考だ"と劇中で告白しているのにも関わらず、ツレ氏に「会社を辞めちゃえば?」「辞めなければ離婚する」と言ってしまうのだ。それは考え方としては正しいことなのだけれども、彼女の中にそう言い切れる根拠や裏付けが見えている訳では無いので、彼女の思考と言動に大きな矛盾を感じてしまった。
例えば、彼女自身のバックボーンにそういう対応をとることが出来るという理屈付けがあるのならば、もしくは劇中で彼女が"正しさ"に気が付くストーリー構造になっているのならば納得ができるのだけれども、そこだけがぽっかりと抜け落ちてしまっているので、二人に(特にハルさんに)感情移入が出来にくくなってしまっている。これは、こういう内容の作品では致命的だと言ってもいい。

加えて、テンポ感が最悪。もともとゆったりめな進行なのに、時制の説明がもともとあったハルさんが描く日記とは別に、途中から"〇月"とか"半年後"という字幕とイラストが入るうえ、それぞれのエピソードの尺がアンバランスなくらいバラバラなので、非常~に観にくい。
ストーリー展開は、ちょうど「この世界の片隅に」のように、日記形式で話が進んでいくような形なのだけれども、毎回、各エピソードの終わりにハルさんが描いた絵日記が宮崎あおいさんによって読み上げられるので、そのたびに強い蛇足感を感じてしまった。彼女のナレーションは大好きだけど、例えば悲しい場面ではナレーションを無くしたりとか、そういうのをやって欲しかったなあ…
そのあたりのストーリーの整理と練り込みをきちんとやってほしかったです。

まぁただ、お団子頭の宮崎あおいさんとイグアナを抱きながらニコニコしている堺雅人さんがお二人でいる図は、観ていてとてもほっこりしますし、うつ病を患ってしまった人に対して、どう接すればいいのか(うつ病を患ったらどうすればいいのか)についてはそこそこ描けているので、まあまあ良かったんじゃないかな、と思います。
(いくつか候補はありますが)次は何を観ましょうかねぇ…
せーじ

せーじ