ドント

チャトズ・ランドのドントのレビュー・感想・評価

チャトズ・ランド(1972年製作の映画)
3.6
 1972年。うわぁ……こわぁ……。保安官を殺した先住民アパッチ(※100対0で保安官が悪い)を吊るしにガンマンたちが荒野を追っていくが、先住民がブロンソンだったせいで、おっそろしいことに……
 ブロンソンは真の男なので100%向こうが悪くても、追ってきた奴らにはまず「いま帰れば見逃す……」と脅すだけ。馬を奪い撹乱するのみ。影も形も見せず。この時点でもう圧倒的に怖いのだけどカッカきてる男衆は追っかけて触れてはいけないところに触り、ブロンソンの「陰」の怖さが彼らを覆っていく。その影が不安、不信、仲間割れを引き起こし、超怖いことになっていくのであった。
 70年代らしい「アメリカの影」といった物語で、1970年『ソルジャー・ブルー』に連なるいわば西部の悪い白人モノ。もちろんそれぞれに背景があり、迷う白人や帰りたい白人もいるのだが……それもブロンソンの怒りに触れてしまってはもうダメなのであった。パサついた荒野を淡々と進みながら一人また一人と狙われていき心身が疲弊していく様を、あまり凝らずに描くことで逆にドライさが増している。
 追跡側がヒゲだらけで見分けがつかなくなる難点もあるけれど、南軍として戦った経験がある深みのあるキャラ、ジャック・パランスほか脂の乗った輩がたくさん出てきて、そんな輩が不意に撃たれたりするのですごくこわい。ブロンソンの出番がごく少ないのも怖さに一役勝っている。向こうが一線を踏み越えた後はどんどん出演タイムが短くなり、一言も喋らなくなる。ちょっとの時間で相手の股間を丸焦げにしたり頭の皮を剥いでいたりする。ほとんど幽霊のようだ。
 オバケではないけど、言ってみれば西部劇怪談のごとき味わいがあって、なおかつ濃い目に撮られていないので、おっかねぇものをスーッと飲まされていく感じがある。終盤の展開を観て残るのは「うわぁ」「わぁ」「こわぁ」という感想ばかり。いやぁいいものを観たな……。それはそうとアパッチの服に着替えたブロンソンの生足がチラついて気になってしまったな……
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