踊る猫

甘い生活の踊る猫のレビュー・感想・評価

甘い生活(1959年製作の映画)
3.9
「諸行無常」を感じた。どんな楽しいパーティも、どんな華やかな人生も、いずれ終わる。むろん終わるから全てが無意味だなんて子どもじみた悲観論を語りたくはないものだが、この映画を観ているとその「無意味」かもしれない酔狂な出来事がしかし無視できない悦楽に満たされていて、その強度において生々しいという実感を感じさせてくれる……と小難しく書いてしまったが要は「楽しければなんでもいいじゃん」という無責任な姿勢に貫かれた映画である、と思われたのだった。フェリーニ作品を全て観たわけではないけれど、この「なんでもいいじゃん」なノリではっちゃけて、でも終わるという「諸行無常」は『フェリーニのアマルコルド』でも『女の都』でもそうだったように思われる。フェリーニという人の体質なのだろうか。だとしたら、彼の世界は意外と日本人にウケそうな気もするのだった。この映画だけに限っていえばスジはあってないようなものだが、その中に無常を(奇蹟はこちらの理屈を超えて起こるかもしれないし、人はいつ死ぬかわからないということを)さり気なく忍ばせているあたり侮れない。
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