馬井太郎

バーティカル・リミットの馬井太郎のレビュー・感想・評価

バーティカル・リミット(2000年製作の映画)
4.2
登山に熱中していた若かりし頃(今も若い、つもり)、一度だけ標高のあまりない冬山を単独行したことがある。垂直岩登攀の技術はないので、普通の尾根道だったが、当たり前のこと、夏山とは全く違う山容になっていた。積雪のため、夏の登山道を辿ることなく、直登できるメリットはあっても、雪庇やクレバスなどの危険がいっぱい潜んでいる。
6千mを超えるヒマラヤ山域ともなると、私では乳飲み子以下、たわいないもの、比較にも、お話にもならない。しかし、冬季山岳をあなどることは、時に命取りになる。
この映画のあることは知っていたが、実は、ようやく観る機会に恵まれた。
ミステリアスなスコット・グレン、美貌イザベラ・スコルプ(007ゴールデンアイ)以外、初めての俳優陣、実地ロケだったということを信じたい。その証拠のひとつに、ほとんど好天気だった。太陽が燦々とふりそそぐ雪山は、一度経験したら、やみつきになるだろう。だが、それが、救助隊が背負うニトロへの危険要素にもなった。
というように、サスペンスものの命・「カセ」がふんだんに散りばめられている。
俳優陣のセリフ・息遣い、酸素の薄い高地をよく表現していた、と思う。
制作から15年も経ったとは思えない、当時の新鮮味が生きていることに満足した。