馬井太郎

切られ与三郎の馬井太郎のレビュー・感想・評価

切られ与三郎(1960年製作の映画)
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「大菩薩峠」に続いて、また観てしまった暗い雷蔵映画である。よく見ると、テニスの錦織圭に似ているな、と、ふと思った。

小学生のころ、朝礼の台に上がった先生が、突如歌い始めた。「粋な黒塀 見越しの松に・・・」1954年に大ヒットした春日八郎の「お富さん」である。この歌を知っているものは、手を挙げなさい、と言われて、ほとんどがその通りにした。知っているだけではなく、大いに口ずさみ、歌ったものである。先生の次の言葉は、「歌うことを禁止する」、というものであった。
なぜなのか、理由もわからず、その通りにしたことを思い出す。
それから6年後、映画がつくられたこともことも知らず、今日に至った。

三味線弾きが、刀を振り回す浪人相手に互角どころか、バチを武器にし、相手の刀をも奪って格闘するシーンは、眼を疑った。屋内の殺陣が、二度出てくる。柱、低い天井、襖が邪魔したからこそ、与三には有利だったのか。
あれほどの殺陣は、私の眼には、信じられなかった。

50年以上前、私は、房総半島一周の自転車旅行をしたことがある。その初日に、木更津で何となしに立ち寄った寺に、与三郎の墓があったのを、いま、思い出した。
近いうちにまた訪れてみよう。その時は、蝙蝠安の寺もあわせて、はしご、しよう。

「大菩薩峠・完結編」と「切られ与三郎」のラストシーンとが、重なって見えた。
撮影が、宮川一夫、であることも書き添える。