磔刑

泥棒成金の磔刑のレビュー・感想・評価

泥棒成金(1954年製作の映画)
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「時間泥棒」☆0.2

中身なさ過ぎ。

普通主人公がやり手の元泥棒って設定ならそれを生かしたテクニックや技を披露する魅せ場、培った経験や勘で謎を解き危機を脱する等で話を盛り上げるだろうが、そんなもん一切ない。「主人公は元凄腕の泥棒ね、以上。」って口頭での説明以上の説得力が本当に存在せず、作品の地盤がゆるゆるの状態で進むので、話に全く説得力が感じ取れず全てが陳腐に感じる。

主人公が対決するコピーキャットの犯行も盗まれた結果でしか演出しないので、リアリティもなければ対決する敵役としての存在感も弱く、マクガフィンとしても余りに空虚ではないだろうか。それに犯行手口が“屋根から侵入し、寝てる間にこっそり盗む”って発想が馬鹿にも程がある。そこまでガバガバのセキュリティなら盗まれる方にも多分に問題あるわ。

ただでさえ無い中身に捜索パートのつまらなさが更に拍車をかけている。
基本的にコピーキャットを追いかける事を主にして物語が進行するのだが、これといって何をする訳でもない。そんな馬鹿なと思うだろうが本当に言葉通り何もしない。犯人の手がかりを見つける事もなく、目撃者を探すでもなく、遺留品だの犯行手口から犯人を見つけるとかそういった事は一切せず、ずーっと主人公がグレース・ケリーとイチャついてるだけ。
主人公が何もしないのもそうだが、そもそも何も起きない。手がかりを追ってて敵から逆襲を受けたり、罠にかけられたり、窮地に追い詰めたり、そんなサスペンス、ミステリー、スペクタルの記号的アクションすらまともに起きない。例えるなら敵とのエンカウント、イベントムービーが一切発生せずエンディングまで一本道で進む退屈なRPGのようだ。

そのせいで物語の推進力はゼロ。加えてほとんどアクションではなくセリフで進行する為、画面が停滞し、観てて本当にウンザリする。さらに加えて、その会話も大体本筋と関係のない無駄話で全然内容が頭に入ってこない。総括すると全てのセリフ、シーン、シークエンス、演出が軸である“泥棒を探す”とは無関係なので見ていて苦痛。必要なシーンだけで構成すれば15分もあれば事足りる内容だ。
主演の2人と監督のネームバリューがあるから何とか体裁が保てているが、まごう事なき駄作。ヒッチ・コックにしては珍しいメロドラマ作品だが、にしても酷過ぎる。この馬鹿と陳腐のハイブリット感は『タワーリング・インフェルノ』に似てる。
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