もものけ

ヴァイラスのもものけのネタバレレビュー・内容・結末

ヴァイラス(1998年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

台風で積荷を失った運搬船シースター号は、漂流するロシア船ヴォルコフ号と遭遇する。
領海外協定でロシア政府から報奨金が得られることを知り、クルー達は宝探しのように船へ乗り込むが、そこには人類が未だ遭遇することがなかった生命体が待つ、恐ろしい場所だった…。






感想。
俳優ファミリーのボールドウィン一家で、一人だけ顔が違うウィリアム・ボールドウィンがキャスティングの一人で起用されていて、「バックドラフト」では感動すらした熱い消防官で主役だったのに、複数のキャストの一人に甘んじるB級SFホラー。

90年代作品は、個性的な複数の登場人物達の巻き込まれた状況で、一人ずつ死んでしまうキャラに観客が感情移入するプロットが流行っており、この作品も「ザ・ロック」や「コン・エアー」などのように、主人公以外のキャスティングにも有名な役者を起用するバラエティに富んだ作品になっております。
主役は"絶叫クイーン"ことジェイミー・リー・カーティスですが、ドナルド・サザーランドやクリフ・カーティスなどの有名な俳優も起用しているので、よりキャラに感情移入できるようになります。
クリフ・カーティスなどは、主役級の役者ですが当時は悪役の脇役が多かった時代でもあり、顔面タトゥーのバッドガイな出で立ちで、インパクトを出しております。
シャーマン・オーガスタスやマーシャル・ベルなども個性的な俳優で、脇役ながらも味のあるキャラクターを演じています。

謎の漂流船へ"欲"をかいた登場人物達が、船内で恐ろしい目に合い、生き残って怯える謎の人物と遭遇して生き残るサバイバルを繰り広げるという"日曜洋画劇場"で放映される王道プロットですが、この当時流行ったプロットは、後の作品への影響力は絶大でして、ゲームや漫画などにも現代に至って利用されているパターンで、この作品もしっかりと反映されております。

B級SFホラー映画とあなどるなかれ。
「ターミネーター2」で視覚効果を担当したジョン・ブルーノが監督をしているので、不気味なロシアの船の中身や、ロボットなどに予算が割かれているだけあって、なかなかの迫力です。
「ターミネーター2」の製作関係者なだけに、"ターミネーター"の新作を作りたかったかのような想いが込められた、人間型ロボットのデザインがなんともチープながらも、ホラー映画として良く作られています。

人間の"欲"の争いや、恐怖で気がふれた者で事態が悪化するプロセスに違和感がなく、無機体である意思が、有機体である人間をパーツとしてハンティングするストーリーなど、脚本もよく練ってあります。
タイトルの”Virus”は、地球上に蔓延って環境を破壊している人類への皮肉であり、宇宙生命体がこれを正しに来るという脚本も面白さがありますが、人体を利用するロボットというプロットは「マトリックス」に影響を与えているのでしょうか。
お金と脚本をかければ、ある意味大作に化けた映画ともいえないことはないです。
でも個人的にはホラー映画はこのくらいのB級さが素敵なんです。

クライマックスに登場する大型ロボットのクリーチャー・デザインと動きが素晴らしい。
一部分を出し惜しみで表現するのではなく、CGI を駆使して全体がかなり長く登場してくるので気合いが入ってます。

いろんな作品の影響を掻い摘んで詰め込みすぎているので、どっかで見たことあるシーンばかりですけど、そういうツッコミをしながら楽しく鑑賞するのも醍醐味です。
炎の中を歩くロボットに、まんま「ターミネーター」やんけ!とは言ってはいけません(笑)

ツッコミどころ満載の100分で鑑賞できる、遊び心満載でSFXが素敵なサクッと楽しめるホラー映画に、4点を付けさせていただきました!
個人的には好きです、こういうくだらなさがある映画。

人類こそ地球の"Virus”なのです。
もものけ

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