長谷川真也

秋刀魚の味の長谷川真也のレビュー・感想・評価

秋刀魚の味(1962年製作の映画)
4.6
1962年製作の映画。小津安二郎監督作品で遺作。

周平は妻に先立たれ3人の子供がいる。長男幸一はすでに結婚しており、長女路子、次男和夫と三人暮らし。
路子は年頃の女だが、周平も路子自身もまだ嫁ぐことを考えていなかった。
しかし、学生時代の元恩師と飲み、家まで送り届けた際、婚期を逃した恩師の娘の様子を見て、路子の結婚を真剣に考えはじめる。

私が観た小津作品では唯一のカラーで、最後まで親子関係を題材とした物語でした。
これまでの作品のストーリー、作風を受け継ぎつつさらにアップデートされた小津ワールドで、監督の花道を飾るにふさわしい作品だったと思います。

『麦秋』では、女子トークシーンが楽しかったですが、この作品では周吉と旧友たちによるおっさんトークが一つの見どころかなと思います。品のない下ネタをするあたりとかおもろい。

父親役の周吉にはやはりこの人、笠智衆が務めます。『男はつらいよ』の御前様を演じるのはさらにこれから7年後の話ですね。
杉村春子は婚期を逃した恩師の娘役でいつもとは毛色の違う役で出演。

長年娘役を演じてきた原節子はこの作品には出ておらず翌年引退。小津監督とは色々噂もあったようですが真意は誰にもわからないのだとか。この作品で娘に選ばれたのは岩下志麻さん。『極道の女たち』のイメージが強い方ですが、本当に綺麗で初々しかったです。
当時の若手だった岩下志麻さんをみると時代は変わったんだなぁと思いますが、笠智衆だけは歳を取ったんだかよくわからないです(笑)