あなぐらむ

麦秋のあなぐらむのレビュー・感想・評価

麦秋(1951年製作の映画)
4.0
原節子さん追悼で観た。

小津の紀子三部作のひとつ。
家族の接続役をやむなく背負い結婚せず生きてきた女性が、家族の為に決断を下すまでの物語。時間が移ろい、離れ離れにならざるをえない「家族」という形の現実を冷徹に見据える小津の眼差し。空舞台が語る寂寥、精緻に作り込まれたセットが雄弁に語る。

原節子は「東京物語」よりも伸び伸びと時代を先取るビジネスガールを演じ、本当に知的でキュート。淡島千景(こちらもキュート!)とのやり取りは今の女性と変わらないだろう。転じて笠智衆が怒りっぽい父役。相変わらず上手い杉村春子。
北鎌倉の景色がゆったりしていて良い。先輩は「小津映画はSF」と言っていたが、最近は時代が小津に追いついてきたのだろうか。