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海洋天堂のkuuのレビュー・感想・評価

海洋天堂(2010年製作の映画)
3.7
『海洋天堂』
原題 海洋天堂
(『海洋天堂』は海の天国/楽園ちゅう意味やそうです)   
映倫区分 G
製作年 2010年。上映時間 98分。
ジェット・リーが脚本にほれ込み、アクションを封印して主演した親子のきずなを描くドラマ中国・香港合作。
ちなみにジェット・リーは映画の出演料を一切受け取らなかったそうです。
チェン・カイコー監督の『北京ヴァイオリン』などで脚本を手がけたシュエ・シャオルーがメガホンをとり、クリストファー・ドイルが撮影、久石譲が音楽を担当。

李 連杰(リー・リンチェイ)改めジェット・リー。
彼のアクションの基礎は北京武術大会5連覇の実績。

https://youtu.be/0qSsMmRD3jM

https://youtu.be/fo88NIaZITc

※勝手に挙げてますがお叱りを受けましたら消しますので。

この、功夫を極めたアクションスターのジェット・リーが初めてその武術を封印して、非アクションドラマとして出演してるのはかなり新鮮な作品でした。
それに何よりも温かな物語でした。
今作品を見る前にリーの過去の役柄を考えるのは、おそらく間違ったアプローチなんかな。
今作品はシンプルでほろ苦いドラマであり、真摯な演技のおかげで感動的な映画体験となる。
ジェット・リーのミニマルなキャラ設定は、彼が演じるワン・シンチョンにとって正しいアプローチであり、彼のアクション・ペルソナとはまったく異なるもの。
監督は、リーのキャラを  
"母親になった男のようだ "
と表現してるように母性愛溢れる慈愛の父を巧く演じていた。
ワンは水族館のメンテナンスの仕事をしていて、14年前に妻を亡くしている。
また、重度の自閉症を患う息子ターフー(ウェン・チャン:『白蛇伝説』でもジェット・リーと共演)の全責任を負っている。
ワンも肝臓がんで余命3カ月と宣告される。
今作品の物語は不穏な幕開けとなる。
ワンは息子を海に連れ出し、自分も息子も溺れさせようとする。
息子は密かにロープを解いており、息子は彼の閉ざされた世界で特別な才能を持っていた。
彼は泳ぎが得意やったのだ。
そこでワンは、日に日に痛みがひどくなる中、息子に自分の死を覚悟させるために、自宅と職場に戻ることにした。
まず、息子を預けられる場所を探そうとする。
しかし、その施設は子供向けか高齢者向けのどちらかで、22歳の彼にはその資格がない。
そんな中、彼はバスに乗る、卵を焼く、お金を使うなど、簡単な動作の練習をし、普通の生活を送れるようにする。
水族館の水槽で泳ぐ日々を送るターフーは、旅するサーカスのピエロでジャグラーの鈴鈴(クワイ・ルンメイ。後の『ドラゴンゲート 空飛ぶ剣と幻の秘宝』でジェット・リーと共演、本作では歌も歌っている)と親しくなり、ターフーに信頼できる人を与えてくれる。
しかし、彼女の人生は遊牧民であり、ワンの人生は徐々に消えていくことを考えると、ターフーはどうなってしまうのだろうかと心配になる。
今作品は、シュエ・シャオルーにとって初の監督作品で、シュエ監督はこのプロジェクトに14年間取り組んできたと語っている。
これは自閉症の子供たちとのボランティア活動に言及したもので、ジェット・リーが脚本を読むまでに7稿が出来上がっていたそうです。
印象的やったのは、今作品のために集められたスタッフです。
撮影はオーストラリアの撮影監督、映画監督、俳優。
アジア映画を中心に活躍し、杜可風という中国名を名乗っているクリストファー・ドイル。
音楽は久石譲(『菊次郎』『千と千尋の神隠し』)。
プロダクションデザインはイー・チョンマン。
この3人が揃ったことは、低予算であることを考えると、とても信じがたいことかな。
リーと同じようにシナリオを読み賛同したんかな。
彼らのコラボレーションは、音と映像において、この映画を大いに助けている。
これは、美しい外観の映画でした。
撮影とプロダクションデザインは、彼らの生活の中にある水を常に寓意するように、全体的に青い色調で支配されています。
リーと特にウェンの演技は、少しオーバーリアクションもあるけど、個人的には善かった。
この2人の関係は、ターフーとリンリンの関係同様感動的やったなぁ。
今作品では、この2人の関係はあまり強調されていませんが、これは今作品にとって正しい判断やと思います。
今作品を善くしてるんは、ウェンが自分のキャラとこの2人との交流をどう描くかにかかっている。
家族間の問題には魔法のような解決策はなく、ただ思いやりのある人たちの努力の積み重ねで、この物語には、本当の意味での敵役は存在しない。これをマイナスと考える人もいるかもしれないけど、今作品にはそれが必要ないかな。
今作品とジャッキー・チェンとサモ・ハンの『ファースト・ミッション』との間には、確かにいくつかの類似点がある。
両作品とも、知的障害のある親族に対処せざるを得ない管理人を扱ったドラマチックな役柄で、人気アクションスターが演技のレパートリーを広げるチャンスを得た作品といえるかな。
今作品は、末期症状のヒーローを登場させて観客の琴線に触れさせようとする作戦のように見えるかもしれないが、その前提を本質的に過小評価することによって成功している。
ジェット・リーの心のこもった演技はファンとしてはメチャ魅力的でした。
本当のヒーローは思っているより身近にいるんかな。

この後、2013年にリーは、米ハリウッド・レポーター紙のインタビューで、10年に甲状腺機能亢進症と診断され闘病中であることを公表した。
甲状腺ホルモンの分泌過多により、心臓をはじめとするほぼ全ての臓器に機能低下をもたらす病で、全身疲労と体重の減少が主な症状とされている。
此がなければリーの新たな境地に立った作品を沢山観れたのかなぁと思うと少し残念でもあり寂しくなったかな。
ただ、彼のマネージャーを務めるスティーブン・チャスマン氏は、
『彼(ジェット・リー)は甲状腺機能亢進症と10年もうまく付き合ってきましたし、そもそも命に関わるような重篤な病ではありませんから、心配無用ですよ』と述べている。
とは云えかなり老け顔になってたし心配。

今作品のような温かなキャラのジェット・リーをもっと見たいかな。
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