潮騒ちゃん

八月の鯨の潮騒ちゃんのレビュー・感想・評価

八月の鯨(1987年製作の映画)
4.6
海辺の別荘と、年老いた姉妹。日が登り暮れていくだけの一日に、特別なことは何も起こらない。そこにあるのは積んだ年月と紡いだ記憶。二人の声に、表情に、浮かび上がるそれらは今もなお鮮明だ。これ以上ドラマチックなことはないと思った。年を取れば不自由にもなる、あたりまえに終わっていく。けれど今、姉妹はここに生きている。喜びと悲しみ携えながら。白髪を揺らす潮風、皺だらけの頬を照らす月明かり。例えでもなんでもなくただ率直に美しかった。あと何回、姉妹は8月を見るのだろう。余生と呼ぶにはあまりに穏やかで眩しい夏の終わり。
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