このレビューはネタバレを含みます
サム・ペキンパー監督の1971年の傑作である。
彼がアクションシーンをスローモーションで表現するようになったのはいつ頃からだろう。
「ワイルドバンチ」、「わらの犬」、「ゲッタウェイ」、「戦争のはらわた」辺りではもう満載されている。
彼は黒澤明の大ファンで「七人の侍」の中の志村喬が子供を拐って納屋に立てこもった盗賊を一撃し、スローで倒れ込むシーンをいただいたという話である。
物語は虫も殺せないダスティン・ホフマン演ずる数学教師デイヴィットが妻エイミー(スーザン・ジョージ:チャールズ皇太子の元恋人)と彼女の故郷で父親がかつて所有していた別荘のあるイギリスの小さな田舎町にやって来るところから始まる。
「世界の街角」、「世界ぶらり旅」などのアットホームでウェルカムな陽の世界が広がっていればいいが、片田舎ともなれば極めて排他的でネガティブに反応するという側面は現実的には存在する。今ではアジア人ともなれば尚更の感がある。
デイヴィットはこうした閉鎖的で排他的な町の人々から嫌がらせを受け始める。
町にたむろする不良連中は幼馴染のエイミーに接近し、結果気の弱いデイヴィットは彼らの住む別荘の修繕を頼まざるを得ない羽目になる。元々街の不良達の目的は色気満載のエイミーにあり修繕作業などはかどるはずもなく、いたずらや嫌がらせが加速し始める。
こうしたやりとりの末に嫌がらせに歯止めが掛からなくなった連中が暴徒と化し別荘に攻め入って来る。
人間に潜在する暴力性、排他性にトリガーが弾かれ、鎌首をもたげてくるのは世界のどの民族においても残念ながら普遍しているのは事実である。
世界のどこかで未だに戦争や紛争が続いている事がそれを物語っている。
誰も彼もがディズニーの夢と魔法のファンタジー王国に住んでいればいいのにと思うが、現実はそうではない。
デイヴィットは生き残る事に全意識が変化しいろいろな仕掛けと罠を作り、彼らに対抗していく。
窓から猟銃を持って入り込んで来た暴徒のボスが銃の銃身に鉄棒を振り下ろされた瞬間、暴発して片足が吹っ飛ぶシーンや、別な窓から入り込もうとする連中に熱湯をぶっ掛けたり、寝返ろうとするエイミーをなだめながら、冷静に一人一人に対峙していく。
理屈抜きに謂れのない暴力に向き合って頭を使い対処していく様は緊張感を伴いながら、最後は脱力感で満たされる。