マヒロ

近松物語のマヒロのレビュー・感想・評価

近松物語(1954年製作の映画)
4.0
京都の名士の妻であるおさん(香川京子)は自身の兄より金の無心を受けるが、主人に頼むのを恥と考え、その手代である茂兵衛(長谷川一夫)に依頼する。しかし、それがきっかけであらぬ疑いをかけられてしまった二人は逃避行の旅に出る……というお話。

善意からの行動が、周囲の人間の勘違いや悪意によって捻じ曲げられて悲劇に転がっていき、その中で二人は結ばれるわけだがその頃にはもう取り返しのつかない事態にというなんともやり切れない物語。
ただ辛いだけでなく、二人が徐々にお互いを信頼していく過程に一縷の希望が見えたりするところがより一層切ない。

撮影の美しさは流石の名カメラマン宮川一夫という感じで、水面のシーンのこの世のものとは思えない幽幻的な画が、決して明るい未来が待ち受けているとは言えない二人の行く道を暗示するかのようで、恐ろしくも美しかった。

決して良い人が報われるわけではないという無情さを、変に湿っぽくすることもなくドライに描きる物語運びが素晴らしい一作。溝口監督はかなりパワハラ気質だったという話を聞いたことあるが、この無慈悲さを見ると何となく納得出来るかもしれない……。

(2021.129)
マヒロ

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