Hagieen

毎日が夏休みのHagieenのレビュー・感想・評価

毎日が夏休み(1994年製作の映画)
4.5
金子修介監督、佐伯日菜子主演。
新興住宅に居を構える林海寺家。義父の成雪は一流企業に勤め、娘のスギナは成績が良く世間体の良い幸せな家庭だ。
ところが実情は娘はいじめで登校拒否、義父は会社の方針が合わないと退社。一転して問題だらけになり母・良子は苦悩する。
成雪とスギナは何でも屋のデイサービスの会社を興すが・・・

この作品は自分の好きな役者が脇を固めている。それだけでも評価が上がる。
義父役は佐野史郎で知的さと世間ずれしたキャラクターは適任だ。スギナと義父の成雪はどこか異世界の存在のようで、佐伯日菜子と佐野史郎のコンビが醸し出す雰囲気がいい。
その中で唯一現実の世界にいるのが母親役の風吹ジュンだ。一番苦悩しているのが母親なので、風吹ジュンのかわいらしさが残る感じじゃないとこの話は重くなる。

佐伯日菜子は新人で演技経験がない中での抜擢で、どこか初々しくも棒読み感のあるナレーションが逆にこの作品の魅力の一つである。それは義父成雪が合理的で、若干他人の感情の機微を捕らえるのが苦手なキャラというのとも親和性がある。

義父の元妻として紅子(高橋ひとみ)が登場する。
原作を読んでいないし映画ではそこまで描かれていないのでホントのところはわからないが、スギナ目線でみると義父との関係はある種疑似恋愛でもあり、紅子とはライバルであり同志という関係性でもある。
ラストカットをああいう形にしたのもよくできているし、鈴木トオルのED曲とも非常にマッチしている。

人生の目標を見失ったり、現状から逃げ出したい状況は誰でもあるかと思う。世間体や社会通念、規則にしばられた現代社会。映画が公開された1994年当時よりも今の方が厳しくなっているのかもしれない。
そういった世界をポンっと飛び越えていく成雪とスギナの生き方に憧れるし、それ故にこの二人はファンタジックになるのかと思う。

ロケ地となった多摩ニュータウンは何度となく足を運び、映画の世界に浸り癒されに行く。単なるハイソな住宅という事ではなく、きれいに計画された住宅地はどこか異世界を思わせ、先述したファンタジックな要素も狙ったのかと思う。
多摩ニュー映画の代表作にして傑作。
Hagieen

Hagieen