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泥の河のKKMXのレビュー・感想・評価

泥の河(1981年製作の映画)
4.4
 久々のブルースタジオで鑑賞。いや〜素晴らしい名画でした。

 舞台は昭和31年の関西、定食屋の息子が廓船の姉弟と仲良くなり、世界の不条理を少しずつ知っていく話です。

 自分はなんでも言語化するのが好きで、不粋だなと思いつつも、この不粋さが世界を明確に照らし出す武器になると確信していて、これからも言語化道を極めていく気マンマンなのですが、たまに言語化したくない作品に出会うことがあります。例えば『戦場のメリークリスマス』とか。

 本作もその類で、語ろうと思えば語れるのでしょうが、それよりも感覚を留めたく思いました。

 戦争によって希望を剥奪されて虚無と無常を植え付けられた人たち、常に隣にある突然訪れるリアルな死、主人公ノブオの父親の瞳に浮かぶやるせない絶望、這い上がることができない現実、その中でも店のテレビに写る初代若乃花と栃錦の一番(自分が史上最も好きな格闘家は土俵の鬼こと初代若乃花)、幼くして娼婦の運命を受け入れるしかない姉、夜の食堂に響く弟の軍歌、ハキハキと子どもらしいがカニに火をつけて遊ぶ弟、ノブオの母と姉の一瞬だけ訪れる擬似的な母娘愛とそれが幻と理解する姉、夜の廓船における姉弟の母の射るような瞳、まるで死神のようなお化け鯉……本作は生きる哀しみそのものの映画でした。


 ちなみにブルースタジオ、観客9人。コロナ以前、コロナ中、コロナ後、客足はまったく変わりません。ブルースタジオは時間が止まっているようなトライライトゾーンですね。しかし、惣菜かざまは少しずつ値上げが……メンチが110円まで上がってしまった!しかしまだ野菜コロッケは35円!今度ブルースタジオ行ったデカいチキンステーキ(250円くらい)に挑戦してみようかな🔥
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