るるびっち

超能力だよ全員集合!!のるるびっちのレビュー・感想・評価

超能力だよ全員集合!!(1974年製作の映画)
3.4
昭和とはブラックな時代だ。
子供のころ全く気付かなかったドリフの笑いは、ブラックと暴力とパワハラのオンパレードだ!!
いかりやの不当なパワハラ虐待に耐える加藤茶。
下僕扱いで、自炊した飯すら食べさせて貰えない(他作品)。
いかりやと茶の関係は、運動部の先輩後輩のノリである。
しかし昭和でもギャグとされたノリを、未だに日本の体育会系は引き継いでいる節がある。昭和を越えて明治だね。

テレビでは後年、志村けんが茶を凌ぐ程の人気者になったが、映画では圧倒的に茶がスターだ! 本作では、けんはチョイ役。

菅田将暉似の加藤茶は、メンバー唯一の美男子なのでマドンナと絡む。
一方、いかりやもブサイク過ぎて絡む。実は二人とも三枚目役で、大抵マドンナは他に好きなハンサムがいるのだ。
ドリフは主役なのに、脇役のハンサムに勝てない。
考えると奇妙だ。
主役なのにヒロインと結ばれないなんて、一般映画の法則に当てはまらない。
これは昭和喜劇、独自の法則かも知れない。
チャップリンもキートンもヒロインと結ばれるから、コメディアンで三枚目だからヒロインと結ばれないのは日本独自の階級意識ではないか?

二枚目と三枚目には、歴然とした境界線が引かれている。
これは歌舞伎からくる感覚だろう。主役は二枚目で三枚目は脇役。(歌舞伎本来の主役は番付の一枚目)
それが喜劇映画になると、三枚目が主役になる。
でも、三枚目は美女を獲得できない。
主役でも美醜の壁は越えられない。
昭和には厳格なルールがあるのだ。(植木等は例外な方かな?)

『男はつらいよ』も主役なのに、万年振られ続ける。
あれは山田洋次オリジナルではなく、昭和喜劇の基本パターンなのだ。
例え主役でも、イケメンでない喜劇人はヒロインと結ばれない。

他のドリフ映画では、ドリフが話の中心にいるようで居ない。
大抵マドンナを巡り茶といかりやが恋争いするが、哀れにも全くの勘違いで、マドンナ側は二人に興味がない。
マドンナとイケメンには、大抵それを阻む権力者の悪役が居る。
恋人同士の思いとは無関係に、悪役に恨みを持つドリフメンバーが悪人退治して、恋人達は解放される(『やればやれるぜ全員集合!!』等)。
マドンナとイケメンを邪魔する悪役の話に、勝手に割り込んで掻き回して悪人退治して去っていくのだ。
ドリフが主役だけど、話の筋で考えると恋人達と邪魔な悪役がメインだろう。
主役なのに話の筋では中心ではない、変な映画が多い。
後年『男はつらいよ』も満男が中心で、寅さんは横に居るだけみたいになったが、喜劇人を恋の中心からズラすから奇妙な構成になるのだと思う。
美男美女と三枚目に厳格な境界線を引くルールの副作用だろう。

所が本作は、実は御曹司ながら記憶喪失になった青年を茶が演じていて、彼を中心に話が進む。
御曹司というパワーを得たお陰で、話の中心に居られるのだ。
恋では中心に居られないが、謎の御曹司なら中心に居られる。
実生活では、45歳年下の美女を獲得できるイケオジなのだけれど・・・

ディズニーが太ったキャラを主役に、短編アニメを作ったらしい。
今の時代なら、比較的二枚目な茶でなくても恋の主役になれるだろう。
それこそ、高木ブーで恋バナすれば良い。
ディズニーよりポリコレ先進映画になるだろう。

仲本工事氏のご冥福をお祈り申し上げます。
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