カツマ

ファントム・オブ・パラダイスのカツマのレビュー・感想・評価

4.0
堪え切れない悲しみが、血みどろの宴となって狂い咲く!それは狂乱のロックオペラ!オペラ座の怪人を題材にしていながら、若きブライアンデパルマの野心が全編で爆発!ファウストに襲いかかる悲劇という名の劇薬をブチまけて、頭のネジの吹っ飛んだ極上にスリリングなミュージカルが完成している。仮面の下の張り裂けそうな瞳、断末魔の叫び。愛する人を愛し過ぎるあまりに全てを壊すしかないファウスト。これは異形ゆえに愛されない悲劇の男による、復讐のダンスだ。

音楽界の大物デスレコード社のスワンは、ロックの殿堂入りを目指して打開策となる新たなシンガーを探し求めていた。スワンはある日人気バンドジューシーフルーツの公演後、ピアノで歌っていた男ウィンスローに作曲の才能を見出すも、彼の曲のみを奪い取り、上映予定のロックオペラで使用することにした。曲を奪われたことを知ったウィンスローはスワンに復讐しようとするも、その最中誤って顔面に甚大な火傷を負い、声までも失ってしまう。
逃走後死んだと思われていたウィンスローだが、仮面とマントを羽織った異形の怪物として復活。スワンに再度復讐の刃を向ける。

劇中にはフェニックスという名の女性シンガーが登場し、彼女はウィンスローとスワンの運命を左右するミューズとなる。とはいえ大筋だけはオペラ座の怪人だが、1970年代のテクノロジーを駆使した全く新しい物語だと言っていい。
スワン役には数々のヒット曲を世に送り出したポールウィリアムスをキャスティング(彼はベイビードライバーにもチョイ役で出演しています)。ザ・フーのロックオペラもすでに完成したこの時代、映画でそれを再現しようとしたデパルマの若き熱量が炸裂し、彼に一躍ヒットメーカーへの階段を登らせた記念碑的作品です。
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