あなぐらむ

ドライヴのあなぐらむのレビュー・感想・評価

ドライヴ(2011年製作の映画)
2.9
世評の高いニコフンの出世作である。
俺はジェイムズ・サリスの原作(ハヤカワ文庫版「ドライブ」。現在は本作のスチルが表紙になってる筈)を映画化前に既に読んでしまっていて、その近年稀に観るアメリカン・ハードボイルドな筆致にほれ込んでしまっていたので、ちょっと観に行ったのを後悔した。

本作は原作という素材を使って再構築された映画だと思う。なのでゴズリング演じるドライバーは、言ってみれば原作のパラレル世界にいる人、みたいな感じで、俺は捉えた。何よりも原作と映画で大きく違うのは、ドライバーの行動基準、規範だ。原作においての彼はウォルター・ヒルの「ザ・ドライバー」がそうだったように、己のルール、己が基準を変えてこようとするもの(人)に対して「そうではない」と否を唱えて反撃するのであって、本作で大きく関係性が押しだされている女子供の為では断じて無いからだ。それは最終章辺りではっきりする。
所が本作では思いのほかセンチメンタルにその辺りが描かれて、これはライアン・ゴズリング側の意向もあったのだろうが、社会性は無いけど一応人間想いというか、平たく言えば勧善懲悪な人になっているので、分かりやすい分、ソリッドなハードボイルドだった原作の部分が薄まってしまっている。
悪い映画ではないと思うし、これ単体では十分だと思うので、ゴズゴズが好きな人は見て損なしだとは思う。原作と比べて頂くのも一興。

キャスト陣も豪華だし、音楽も大変良く、OSTは暫く聴いていたんだが、やはり映画は「合う/合わない」というのはあるんだなという事だ。これ、当初予定のヒュー・ジャックマンがそのままやってたら、もっと男臭い(泥臭い)話になってたんだろうか。