しんしん

夕やけ雲のしんしんのレビュー・感想・評価

夕やけ雲(1956年製作の映画)
4.0
木下恵介監督作

魚屋の一人息子の洋一が主人公。姉は結婚を約束した彼氏を振ってお金持ちの元へ嫁ごうとしている。父親が病気で死にかけ、洋一は夢を捨てて魚屋を継ぐ。

青春の終わり、開かれた可能性から一つの道を選択する瞬間の物語。過去の栄光、家族という形の終わりであり、始まりの様子。

姉は最終的に駆け落ちのようにして、金持ちを振って元彼と一緒になる。姉はお金や名誉から解放され、本当の愛を見つけ出した。そういう点では「お嬢さん乾杯!」と通じるテーマ性。

洋一の友人である誠二との関係がキーポイント。非常に親密な関係で洋一のコンプレックスである魚臭さを唯一認めてあげる。

洋一は好きなお姉さんがいて、双眼鏡で覗いてみる。このモチーフは途中から象徴的な物に変わっていく。手の届かない物、夢への憧れ。そして、彼は終盤「僕はあの人が好きだ!」と双眼鏡を覗きながら叫ぶ。確実にこの手の届かない相手は誠二であることが考えられる。だって別れの場面とかお互い足をツンツンさせてるもん。

そして、夢や希望、愛したけど届かない思い、開かれた全ての可能性を捨てて魚屋を継ぐ。そうするほか彼の選択肢は残っていないから。そして、ラストシーンは夕やけ雲を眺めながら少年時代思い返す洋一。

やっぱりね木下作品は映画的クオリティが抜群に高い。それでいて分かりやすく見れる。そしてなにより非常にテーマ性が現代的。