かえるのエリー

ペルセポリスのかえるのエリーのネタバレレビュー・内容・結末

ペルセポリス(2007年製作の映画)
3.3

このレビューはネタバレを含みます

2008/02/17

正直絵にはあまり期待してなかったのだけど、実は一番興味深かったのはこのアニメ、絵の部分だった。主人公マルジの回想部分がモノクロ、現在がカラーで表現されているのだけど、物語の9割以上は回想シーン。これが多彩な表現方法で出来ているから、まったく飽きる事はない。もの凄く感心してしまった。内容がイラクの時代的/政治的な部分が大きく関係しているので、アニメにしたのは必然。これが実写だったら正直辛いだろう。

 逆に期待を裏切られてしまったのは物語だ。正直もっと痛快な感じで進んでいくかと思いきや、後半になるほど尻つぼみ。まぁこれはマルジ自身の自伝なので、事実のままに伝えた結果かもしれないが。

 70年代~90年代のイラン、政治や戦争によって生活が規制される中で、マルジはとっても痛快な子供だった。活動家の叔父を愛し愛され、とても魅力的な女の子。そんなマルジを小さな枠に収めたくない両親が彼女をヨーロッパへ送り出したのに、自由を掴んだはずのマルジは逆に失速。恋に破れボロボロになっていくマルジを見るのは辛かった。ヨーロッパでは異国人、イランに帰ればよそ者扱い。彼女はアイデンティティを失いもがく・・・なんて皮肉。

 そんな中、私が感銘を受けたのはマルジのおばあちゃんの数々の言葉。下着の中にジャスミンの花をしのばせる素敵なおばあちゃん。彼女がマルジに教える事はきっと鑑賞者の胸にも響くのではないだろうか。