彦次郎

大学は出たけれどの彦次郎のレビュー・感想・評価

大学は出たけれど(1929年製作の映画)
3.7
「大学出たけれど」プライドが邪魔をして定職につけない徹夫が就職が決まった嘘電報を打つも母が婚約者町子を連れて上京してくる就職難著しい昭和初期のサイレントコメディ。監督は小津安二郎。
大卒(大学の数は少なかった)でも仕事が決まらない不景気ぶりは現在(鑑賞時2022年9月)とリンクしている不気味さ。ただ仕事の選り好みをしている姿は就職氷河期体験者ならぶん殴ってやりたくなるのではないでしょうか。就職できず原っぱで子どもと時間を潰す姿はリストラされても出勤する無職者と通じるものがありますし、婚約者がカフェ(恐らく今でいうキャバクラみたいな扱いと思われる)で働くことになり怒りをぶつける男のプライドも普遍的なものがあり監督の慧眼に敬服するのみです。情けない男とは逆に田中絹代演じる町子はひたむきに前向きでありラストの日差しの強さと併せて女性の強さが示されていました。
元々は70分の内容ですが現存するのは11分版のみ。寧ろ余計な部分がそぎ落とされた結果、無駄がないのが素晴らしいです。
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