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悪魔を見たのHKのレビュー・感想・評価

悪魔を見た(2010年製作の映画)
4.2
「箪笥」「グッドバッドウィアード」などのキム・ジウン監督による韓国産復讐バイオレンススプラッター映画。キャストはイ・ビョンホン、チェ・ミンシク、オ・サナなどなど

婚約者の女性を連続殺人鬼によって残忍な方法で殺害された捜査官が、その殺人鬼に復讐するためにGPSを利用して彼を追跡する。殺人鬼が標的の女性を強姦殺人しようとする現場を最初に発見し追い詰めるが、なんと捜査官は彼を捕まえなかったそして…

キム・ジウン監督による復讐が復讐を呼ぶとんでもバイオレンス映画である。最早見ているジャンルがそっちの類のが多いせいか、韓国映画=復讐バイオレンス映画というイメージがついてしまっているくらいだ。

韓国の復讐映画はアメリカ映画的な復讐映画の軽すぎる感覚や、日本の復讐映画の説教臭い感じのそれとも全くベクトルが異なり、ひたすら人間の業ともいえる負の感情を全面的に出しながら、エンタメに昇華するから大好きだ。

この映画はどちらかと言えば映画の演出的な持ち運び方はヨーロッパ映画的というよりも、アクションとかオーバーなリアクションで見せるアメリカ映画寄りではある。しかし最後はしっかりと韓国映画独特の何とも言えない後味の悪さを出してくれるからたまらないのよね。

しかし、カット割りに関しては私の大好きな「復讐者に憐れみを」にはちょっと劣るかな。いやまあ両方とも大好きなんだけど、やはり自分としてはこのどうしようもない感情をオーバーに露出させるよりは、もうちょっと抑制して静謐に描く作品の方が良質だと思うし個人的にそういう方が好きだからね。

イビョンホンの捌きっぷりは凄まじいですね。普通だったら大なり小なりこういう人間て映画内で怪我を負ったりするわけですが復讐鬼に目覚めた彼は最早無敵ともいえる。とにかく相手の攻撃はなるべく受けずに傷一つなく制圧する様はすさまじいですよ。

この映画でもしっかりと韓国映画は復讐という感情を見事にえげつなく見せつけてきますが、絶対に肯定するような形で映画は終結しません。個人的にではありますが、復讐ものは大好きですが、復讐した人間が報われてハッピーエンドになる物語は半人前だと思っています。

この映画はしっかりと双方ともに自分がやってしまったことの報いを受け、ともに浮かばれずに終わってしまう。このように、しっかりと双方の人間を悪魔として描く所がこの映画が一人前である理由だと思います。

この映画のもう一つの面白みはこういう善悪二元論で考えて典型的なキャラクターの行動のつけ方を逆転させた所にあると思うんです。普通だったらこういう敵を泳がせるということをやって却って返り討ちに合ってしまうのって悪人側じゃないですか、この映画ってそれを、言うなれば主人公側、善人側がやっているんですよ。

そこがとてもいいと思うんですよね。やはり慢心はいけないというか、油断してはいけないと言いますか、あそこの現場でチェミンシクをぶっ殺してしまえば後の殺人はなかったわけですしね。

しかし、今回はイビョンホンもさることながら、「オールドボーイ」で迫真の演技を見せたチェミンシクも素晴らしいサイコ野郎を演じていますよ。しかもそれでいて最後には勝ち誇るかのように、主人公に復讐してる時点でお前の負けだと説いてしまいますからね。

かと言って、ジョーカーとか「冷たい熱帯魚」のでんでん並みのカリスマ性は感じませんでしたが、しかしとても良い感じの悪役をやっていますよ。本当にこの一癖も二癖もあるキャラクターが溜まらないのですね。

この映画はイビョンホンもチェミンシクも共に狂人の様相を映画序盤から示していってそれがスピーディーに展開されていく所が素晴らしいのですよね。とにかくはじめからイビョンホンも落ち度がありまして、前科者でありながら容疑者に挙げられた人間を片っ端から苛め抜くんですよね。犯人捕まえるためにですけどあそこの感じもえげつない。

そこからの本当に怖い被害者による加害者虐めがとんでもないのですよね。やはり人間ってこう考えると、憎悪に支配されるととんでもなくなるということを痛感しますよ。

そういう意味合いでも見れて良かったと思います。やはりこういう負の感情前面に出しきる映画作品は素晴らしいですね。エンタメ作品として見れて良かったと思います。

この映画もう一つの見どころ、それは正面から描かれるダイレクト〇〇〇。やっぱり韓国映画ってすげえや。汚いものを正面から描くことに関してはちゃんとしていて素晴らしい。
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