ろ

男はつらいよ 寅次郎恋歌のろのレビュー・感想・評価

男はつらいよ 寅次郎恋歌(1971年製作の映画)
5.0

「人間は一人では生きていけない。その運命に逆らっちゃいかん。分かるね、寅次郎君。分かるね・・・」

博の母が亡くなった。
お葬式にいつもの姿でやってきた寅さんは、博の父からこんな話を聴かされる。

「暗い畦道を歩いていたときにな、家の灯りが見えた。その家にはリンドウの花がたくさん咲いていた・・・」


人には皆、捨てられない今の生活がある。
父を一人故郷に残してきた博は、父の寂しさを感じながら、これからも柴又で暮らし続けるだろう。
柴又で喫茶店を開いた女性は、「寅さんみたいに旅をするのが夢だったの。あたし、もう何もかも捨てちゃおうかな。」と笑う。彼女は明日もまた、カウンター越しにコーヒーを注いでくれるだろう。

リンドウの花咲く庭。明るい灯の下で、夕食を囲む家族団欒。
それはきっとこれからも寅さんの夢だ。

「さくら、兄ちゃんのこんな暮らしが羨ましいか。そんな風に思ったことはあるかい。」
「あるわ。一度はお兄ちゃんと交代して、あたしのこと心配させてやりたいわ。寒い冬の夜、こたつに入りながら『ああ、今頃さくらはどうしてるかな』って。そう心配させてやりたいわよ。」

「そうかい。さくら、すまねぇ。」
北風が吹いている。
寅さんはジャケットの襟を立て、また旅に出る。




( ..)φ

最新作の予告編を浴びるように観ていたら、やっぱり寅さんに会いたくなってしまう。
タカ兄が出ているという理由で借りてみた今作ですが、めちゃくちゃ良かったです。
「’ぺこぺ~こぽんぽん’の歌、やめなさい」からの、リンドウの話がもう沁みて沁みて・・・

印刷工場のインクだらけになった顔、あの女性にもう一度会いたくて花占い。
お供えの饅頭盗んで怒られて、タコ社長は大笑い。
でもねやっぱり寅さんは一番大事なことを知っているんだよ。
ろ