ねこ無双

二重の鍵のねこ無双のレビュー・感想・評価

二重の鍵(1959年製作の映画)
3.8
太陽の下、広大な敷地に住む裕福な一家。
もとから壊れてる一家の関係が、さらに殺人事件を呼んでしまうミステリー。

原作は推理小説、50年代のミステリー映画です。
収集のつかない家族ドラマを観ていたら、犯人の毒気にあてられました。
他のシャブロル監督の映画とは全く違う雰囲気に感じたのはなんでだろう…。

ジャン・ポール・ベルモンドは一家の長女の婚約者で、この家の下宿人。
どちらかといえば寄生してるみたいな?
ベルナデッド・ラフォンはお手伝いさん。
ラフォンが窓から下着姿で通りかかる男性を面白がりながら誘惑するオープニング。
ここのシーンが凄く好きです。
この映画の美女はラフォンだけではない。愛人レダ役のアントネッラ・ルアルディも見とれてしまう美しさ。

劇的な音楽、切り替えの早い変わった構図が印象的。
カメラマンのアンリ・ドカエは、美しきセルジュ、いとこ同士でも撮影を務めているそうだ。

フーダニットなミステリーのはずなのに、捜査する刑事も後半に短い登場だけ。代わりに推理する探偵要素の人物もいない。
突然結論を突きつけられるかのような種明かし。見えなかった犯人が殺害動機と共に、突然姿を表すかのよう。
謎解きよりも人物同士の関係性に重きを置いてる感じ。

そして、その殺害動機は予想だにしない理由だった。
それなのに、それなら殺したいぐらい憎いだろう、と共感出来てしまう。
殺害を決意した直前の鏡に映る犯人の歪んだ顔の恐ろしさ…。
静かに狂っていくってこういう事なんだ。

見終わってみると、女優陣の美しさ、ベルモンドの自由奔放さ、パリのカフェでの酔いどれシーン、殺害シーンばかり思い浮かぶ。