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復讐 THE REVENGE 運命の訪問者のMoviePANDAのレビュー・感想・評価

3.6
『狂気と運命の交錯』

以前から気になっていた黒沢清監督の“復讐”シリーズ。気になっていた理由はズバリ4作全てのフィルマークスでの評価が総じて高いから。
『復讐 運命の訪問者』3.8
『復讐 消えない傷痕』3.8
『蛇の道』4.0
『蜘蛛の瞳』3.9
今日現在の各作品のスコアは上記の通りφ(゜゜)

あいかわらず“らしさ”が滲むざらついた質感。引きの固定のカットが不穏を煽る。実は以前、この後のオープニングシーンをたまたまテレビをつけた時に観た事がある。途中の部分を少し観ただけでも惹かれる映画は面白い。昔から何度もその経験がある。

正直、オープニングが一番怖かった。ああ、この人達の感覚で人を殺める事は日常なんだなと感じさせる場面。やっぱり黒沢監督の演出はホラーになる。そんなこの映画、早い話が復讐もの。オープニングで家族を殺された少年が大人になったのが哀川翔。その主人公が復讐をするシンプルな話のはずが、この監督はそれを単純にも描かないし、だからといって劇的にも描かない。

冷たい画と動かないカメラは北野映画に通じつつも、影というか暗さの表現が独特。太陽の光で生まれる陰影でなく室内だからこその暗さをあえて徹底的に暗く撮る。それによりアパートやクリーニング店バックヤードのジメジメとした空気感が醸し出される。

進む捜査と浮かぶ犯人像。
一見、“普通”に見える異常者。これが一番怖いかもしれない。『黒い家』もその怖さがあったけど、あえて強調しない事により観ているこちらがその異常に気付く事を待っているかのような演出と展開。六平直政に関しては、ドラマや映画で大体いつもおんなじ感じなのに、そこに喋り方のちょっとした一工夫をした事により異常さが垣間見える。

家族にまつわる真相にあえて迫りすぎず進む事で、途切れない緊張。哀川翔が道を歩くだけでもどこかから襲われるのではないかという恐怖とこちらを惑わすカメラワーク。そして、必然の長回し。長回しをやりたいという演出先行というより、撮ってみたらば長回しになったという印象。特に六平らと鈴木ヒロミツらヤクザのシーンが秀逸。役者陣の熱演も光っていて、故鈴木ヒロミツの組長役は堂に入っている。

いよいよ復讐劇となる後半については、淡々としたトーンは変わらないまでも、伝説と言われる至近距離での撃ち合いや、銃撃をレール撮影で横から捉えたカットなど、その溢れる映画愛ゆえ映画としての様式美や監督なりのカッコよさを追求したものになっている。ただ、先が見えないからこそ引き込まれた前半に比べると推進力はむしろやや失われた感もあり、ここでこの映画の評価は分かれるなと感じた。ただ、そうは言ってもあいかわらず観るものを惹き付ける黒沢作品。やっぱ面白ぇな(*´∀`)v


黒沢清監督の事は『降霊』を観て知りました。と思ったら、実は今では遺恨を残した作品となった伊丹十三製作総指揮『スウィートホーム』の監督だったのを後で知りました。劇場では『回路』を鑑賞。『叫』以降の作品は、ほぼ観ていなかったのですが、ここ数年『リアル』や『クリーピー』といった作品で何だかすっかりメジャーな監督になってきましたね。

気になっていつつも、Vシネマで尚かつ哀川翔主演ってのがどうしても今までネックになってたのですが、フォロワーのピカちゃんが“清”の方の黒沢祭だってんでボクもこのシリーズ観てノっかる事に致します!(^∀^;)(笑)
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