三郎丸

天国と地獄の三郎丸のレビュー・感想・評価

天国と地獄(1963年製作の映画)
3.6
【ベタベタに見えるも、それだけコスラれてる作品】

作品冒頭、女性用の靴についてみんなでヤイヤイの評価シーンがちょっと長く、
「あっ気の短い人は観ちゃいけないヤツか?」
と勘ぐってしまいそうにはなりましたが、それさえ乗り越えれば、後は良いテンポで話は展開します。

お話は、
大手靴会社の乗っとりを狙う主人公権藤は子どもの誘拐事件に巻き込まれ、人生の天国から地獄の苦しみを味わう。
子どもの誘拐からの警察による犯人の確保に至るか否か?

この作品は初見でしたが、既視感が半端ないのです…ということは、それだけ本作品は多くの作品で真似されているということ。
中盤以降のスリルのある犯人と刑事の追跡なんて、刑事モノではお馴染みの展開。あとは、アクションの味付けとして犯人と殴り合いしたり、銃で撃ち合ったり、ハンガー使ったりして撃退するわけじゃないですか?

誘拐された子どもの身代金に全財産を投じたことから会社乗っ取りが実現できず、自宅までも抵当に入れたムリめな乗っ取り劇の最中での誘拐であったことから、結果的に会社を追われるのですが、主人公には新いスポンサーが付き、再び小さな製靴会社を始める。
犯人は成功者への理不尽な妬みで犯行に及び、結果的に身を滅ぼします。
天国と地獄(善と悪)は出発点は同じようなもので、分岐点として個人の生き方によるのでは?

三船敏郎
悪人顔ですが、子どもの命と会社を支配する権利の間に揺れる主人公を熱演!
苦悩するのはいいのですが、結構な人前で、
「子どもは助けたい…しかし!身代金が大金過ぎる!ムム」
堂々と自分の気持ちをセリフにします。
先輩!命の天秤についての赤裸々葛藤を皆聞いてますよ…

仲代達矢
静かに犯人に怒りを燃やす。
淡々と追い詰める刑事を好演。
冷静な語りで、ストーリーに締まりがでます。
本作でも、まばたきせず!

丘の上にある天国様の主人公権藤の家と、地獄様の犯人の狭いあばら家、さらなる地獄の様相のあへん窟。
あへん窟は、白黒作品がゆえ、妙に不気味さが強調されてました。

結果的に命を救うため、財産を差し出した権藤と、大金を手にしたが、結果的に逮捕され、地獄へ落ちた犯人。
あの世の話ではなく、極端な貧富の差や人の心に棲むモノが結果としてその人を天国にも地獄にもする。
三郎丸

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