囁きのwhisper

ビヨンドの囁きのwhisperのレビュー・感想・評価

ビヨンド(1980年製作の映画)
5.0
いわゆる“ゾンビ映画”には、大まかに3種類の方向性があると思ってる。
1つ目は、ホラーとして楽しませることを目的としたエンタメ路線。主な作品は「ブレインデッド」「ゾンビランド」など。
2つ目は、ゾンビを通して世界の諸問題を描く社会風刺路線。主にはロメロ作品など。
そして3つ目は、残酷描写を突き詰めたグロテスクアート路線で、その中でも特にこの「ビヨンド」は頂点に君臨する作品だと思っている。

ホテルの下に地獄の門が存在し、そこから怪異がやってくるという設定もそこそこに、なぜか飛び出したまま放置されている釘、なぜか棚の端に蓋もつけずに置いてある硫酸、どこからともなく沸いて出てくる蜘蛛の大群...など、映画のあらゆる要素が支離滅裂で、フルチの残酷描写をお膳立てするためだけに奉仕している。その歪さがあまりにも“映画的”で素晴らしいと思う。

そして何より音楽。不気味さと美しさの中に、取り返しのつかない後の祭り感が漂うコーラスのメインテーマが本当に素晴らしく、映画自体に加えて映画音楽オールタイムベストにも入れたい一曲。

普通のゾンビ映画として観たら、確かにひどい作品かもしれない。前述したギミックの支離滅裂さに加えて、頭を狙えばいいと分かっているはずなのに執拗に胴体を狙う物分かりの悪さは本当にイライラする。
の割に、ゾンビ化した少女のヘッドショットは即座に狙う適格さね笑(あの少女の存在も、この映画のインモラルさに拍車をかけていると思う)

ラストカットの美しさは、もう言葉が出ないほど。
地獄ではあるんだけど、ゾンビが歩いてたりはしない、まさに絵画の中に入り込んだような静謐さと取り返しのつかなさに、あのBGM!ベストエンディング!

Blu-rayは持ってて何度も観てたけど、劇場公開されたので改めて鑑賞。やっぱオールタイムベストに入る映画は一度は劇場で観ておきたいね。
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