マツシマ

アシュラのマツシマのレビュー・感想・評価

アシュラ(2012年製作の映画)
2.6
平安末期
戦と飢饉に苦しむ人々
そんな苦界に生まれ落ちた少年アシュラは、野を駆け人を喰らい獣同然に生きていたが、ある日旅の僧侶に出会う…

ジョージ秋山作の同盟漫画のアニメ映画化

いやいや、2012年にどんなハードなアニメ映画作ってるねん
という「なぜ今?」な映画
でも「生きる苦しみ」「人間を人間たらしめるもの」というテーマは普遍的で、いつの時代にやってもいいんですよね
ただメディアに露出するあらゆるものが漂白されつつある昨今、これをやるのは凄い

なんせ主人公が人間を食べてるんだから

ジョージ秋山先生の作品は本当にこういう「苦しみ」を描くことに容赦がない
まず主人公の境遇、むちゃくちゃ過ぎる
生まれて程なく、飢えに苦しむ母親に食べるために焼き殺されかけるんだから
壮絶過ぎる

だけどそういう壮絶さが至るところに漂ってる時代を描いているし
何より
「人の内には獣がいる」
というテーマ通りに描いているだけなんですよね

いくらなんでも…というくらい壮絶な主人公の前に
いくらなんでも…というくらいまっずぐ仏法を説く坊主が現れるのは、リアリティ的にはむしろ破綻していないと個人的には思います

ここまでいったキャラクターに、いかにも現代的な、ポストモダン的な、臨床心理学的なアプローチはむしろ鼻白みます
そういう漂白されたアプローチは弱い

数多くの乱世を生き抜いた思想である古典宗教こそがむしろ強い

「生きることは苦である(一切皆苦)」

をドスンと突きつけて、綺麗事を言わない

その上で
「人間だから、道を外れる(人肉食)ことに苦しむ。苦しみ始めたお前は人間になり始めている」
という講釈はなかなかしたり

今日日のアニメ映画でメッセージを筆文字でドンと出すというど真ん中過ぎる演出と相まって
「力強ぇ~~~~~」
と妙に納得させられてしまいます

まあそれもこれもひとえに原作のパワー故なんでしょうけど…


と、ものすごい骨太なテーマに挑んだ本作は「作るぞ!」という大人たちの決意込みで評価出来るなと思いました


アニメ映画としては3Dモデリングでキャラを動かしているので、やっぱまあギクシャクしてんなあってとこは多いのですが、アシュラのアクションシーンはすごいギュンギュン動いてて良かったです
設定こそ壮絶だけど展開もシーンも地味なとこも多く、ダレもするし、決して「上手」な映画でもないのですが、短いしそんなに苦痛ではないです
(まあむしろ生きることはそもそも苦だから…)

まあ「観た方がいいよ!」には入らないけど…
大学の映像系の講義で観せられる系?ていうかな
そういうポジションかもです

とにかく原作読まねばなとなりました



野沢雅子さん凄すぎ
アシュラの慟哭のとことか本当に凄いけど
演じてるの老婆だと思ったら震える
鬼やん