カツマ

ファイナル・ガールズ 惨劇のシナリオのカツマのレビュー・感想・評価

4.0
ホラー映画は洒落にならない。こっそりイチャつくカップルは殺されるし、森の中でキスをすれば殺されるし、頭の悪そうなキャラは殺されるし、とにかく主人公っぽくないのは殺されるし、スクールカースト上位過ぎると殺されるし、とにかくたくさん人が死ぬ。もしそんな世界に入り込んでしまったら?怖気立つはずなのに笑ってしまう、オタク映画の真髄はこんな形で爆発していた。

この映画の後には、ラブコメ映画の中に入ってしまう『ロマンチックじゃない?』でもメガホンを取った、『映画の中に入る系映画』を連発で撮っている監督トッド・ストラウス=シュルソン。ホラー映画の中に入ってしまう今作では、母と娘の物語を大筋に、懐古性抜群のマニアックなホラーワールドを構築。『ハロウィン』や『13日の金曜日』のような世界観を踏襲しながら、実はコメディへも振り切った快作(怪作?)だった。

〜あらすじ〜

大学生のマックスは、3年前に愛する母アマンダを交通事故で亡くし、それ以来、その心の傷を抱えながら生きていた。
母はカルト的なホラー映画『血まみれのキャンプ場』に出演していた女優で、処女を捨てた後に殺される、という冴えない役柄ながらも、一部の映画マニアからは高い知名度を誇っていた。
そんなある日、友人ガーティの兄ダンカンから『血まみれのキャンプ場』の映画館特集上映のため、アマンダの娘であるマックスにゲストとして来場してほしい、という依頼が舞い込んでくる。マックスは全く気が進まなかったが、その代わりに一年分のレポートを肩代わりする、というダンカンの押しに負けて、映画館へと足を運んだ。
上映当日、そこにはマックス、ガーティ、ダンカン、そして、マックスに想いを寄せるクリス、更にはクリスの元彼女、ヴィッキーらが集い、いよいよ上映がスタートした。だが、上映中に映画館で火事が起き、マックスら5人はスクリーンを破いて、脱出。その先には何と『血まみれのキャンプ場』と同じ舞台が広がっていて・・。

〜見どころと感想〜

このビジュアルとタイトルを見て、平均2.0点台のC級ホラー映画か!?と洗脳されてしまうが、まさかまさかのカルトホラー愛が爆発した、ヒネリの効いたホラーコメディである。そもそも『血まみれのキャンプ場』が、もろに『13日の金曜日』なのでパロディ感が満載。そこにおふざけキャラたちの緊張感皆無のノリが炸裂し、どうしようもないアホらしさが段々ツボに入ってくる作品だった。

主演はヴェラ・ファーミガの妹、タイッサ・ファーミガ。姉の21歳下ということで、まだ20代半ばと若手だが、『死霊館のシスター』『運び屋』などにも出演している。他には母役に経験豊かなスウェーデン出身の女優、マリン・アッカーマン、主人公を事件に引き込むカルト映画好きのダンカン役に『ゴジラ・キング,オブ・モンスターズ』のトーマス・ミドルディッチ、更には最近はコメディ主演作が相次ぐ売れっ子、アダム・ディヴァインが弾けまくりの役で登場している。特にアダムの役柄が強烈で、キャラ的には最低最悪ながら個人的には爆笑させられた(笑)

実は『血まみれのキャンプ場』の設定を意固地に守った作品のため、いきなり回想シーンに入ったり、何故か物語が進まなかったりなど、とにかくホラー映画的に頑固に作られている(笑)そのあたりにはオタクの拘りというか譲れない願いを感じるが、そんなカルト臭とは裏腹に母と娘の親子愛を軸として走らせている点が、本作の俗っぽさを巧みに操作している。

C級映画と見せかけて実はこだわり抜かれた名品。おふさげでコーティングしながらも、実は大真面目、という一筋縄ではいかない映画である。大事なのはそこに映画愛があるかどうか。そこには燃え尽きぬオタク魂としての情熱があって、思いもよらない仕掛けが隠されている。昔懐かしのホラー映画への愛が炸裂した、レトロだけどぶっ飛んだ、カルト映画を媒体にしたカルト映画でした(笑)

〜あとがき〜

タイトルやら何やら、とにかく劇場未公開の低予算映画を彷彿とさせますが、蓋を開ければ面白い、という噂の代物です。そして、その噂は評判だけではなかったようで、とてつもなくくだらないシーンもありますが、コメディ要素とホラー要素が上手いこと合体していて、どちらかというとコメディ側に転がっています。

アダム・ディヴァイン演じるカートの頂点越えのバカっぽさ。そして、ひょっとこ顔の黒人が顔だけでツボを突いてくるので、実は笑ってる時間の方が長い作品だったかも。ほら、ホラーとコメディは紙一重、、みたいなところもあったり無かったり、、(笑)
カツマ

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