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狼獣(けだもの)たちの熱い日のHKのレビュー・感想・評価

3.7
日本劇場未公開で未DVD化の珍品をU-NEXTで見つけて鑑賞。
これは怪作というか異色作というか、なかなかの拾い物でした。
主役はリー・マーヴィンですがフランス映画。舞台もフランス。セリフは英語。

序盤、街中でいきなり始まる銀行ギャングたちと待ち伏せ警官隊との銃撃戦。
マーヴィンはいきなりロケットランチャーぶっ放すわ、通行人の子供も容赦なく流れ弾で死ぬわで、この映画タダ者ではないという予感が冒頭からジワジワ。
あの『ワイルドバンチ』序盤の大銃撃戦でさえ子どもは撃たれませんからね。

大金を奪って一人逃走する凶悪犯コブ(マーヴィン)は、迫る警察隊のヘリと犬を連れた捜索隊に追われてある農家に逃げ込みます。
しかし、その農家は大人から子供までが凶悪犯も顔負けのド変態一家で…

このシチュエーション、コメディとホラーのどちらに振り切ってもイケそうですが、本作の場合はブラックなユーモアを湛えつつ田舎ホラーっぽさもある独特のテイスト。
全く先読みできない展開に不思議な吸引力があります。

本作のリー・マーヴィンはかなり老けて見えますが、調べると当時まだ60歳。
やはりこの時代の人は老けるのが早かったようで、この3年後には亡くなってます。
スゴイのは強面のマーヴィンさえタジタジの変態一家(使用人入れて7人くらい)。
曲者揃いの中、一見弱者風の『バルスーズ』のミウ・ミウと『ブリキの太鼓』のオスカル少年ことピーター・ベネント演じる母子が強力だったりします。
こんなところに逃げ込んだマーヴィンがだんだん不憫に・・・

原題は“Canicule(猛暑)”、英題は“Dog Day”。
やはり酷暑が舞台の『狼たちの午後』の原題が“Dog Day Afternoon”ですから、英題も邦題もそこから影響を受けてそうですね。

監督・脚本は『遅れてきた死神(殺しの季節)』のイヴ・ポワッセ。
原作と共同脚本は『さらば友よ』の監督でもあるジャン・エルマン(ジャン・ヴォートラン)。
音楽はフランシス・レイ。
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