あなぐらむ

おんなの渦と淵と流れのあなぐらむのレビュー・感想・評価

おんなの渦と淵と流れ(1964年製作の映画)
3.9
ネマヴェーラ渋谷「妄執・異形の人々」特集で。

「裸体」と同じく成沢昌茂脚本だが、ここで描かれるのは男の妄執と女の業。全体が「渦」「淵」「流れ」と三章構成になっており、語り手が変わるという「バンテージ・ポイント」方式。シャープなモノクロ映像(山崎善弘撮影)が秀逸。
脚本家である程度作品の匂いって決まるんだな、と痛感した。これは優れた「押入れ映画」。城定秀夫「悦楽交差点」の遠いご先祖様とも言える。文学マニアの男が写真だけで一目ぼれした女と結婚し、彼女の溢れ出る「おんな」そのものの前でたじろぎ、疑念を抱く様は、今の若い男子に観て欲しい。この女性への不信は中平「狂った果実」にも通じる。

ヒロインを演じる稲野和子の幸薄そうな雰囲気も作品にぴたりと合った。成沢脚本らしさとしては、おんながおんな自身の「価値」に気づいてしまう所やそれを持て余す所か。「流れ」パートがきつすぎる。それにしても若い頃の仲谷昇のリーアム・ニーソンぶりは異常。
「月曜日のユカ」単体で見ると突出してるように見えるけれど、「狂った果実」からこの年の「おんなの渦と淵と流れ」や翌年の「結婚相談」などと見ていくと、中平の女性観みたいなものが俯瞰できるような気もする。そのくせ「黒い賭博師」とかもやってるのが、これが混ざって「混血児ユカ」になるかもしれん。