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女装ドロ マーサおばさん、ただいま手配中のhorahukiのレビュー・感想・評価

3.2
複雑な愛情…

9月は爺婆⑨

殺人で指名手配されてる10代のスタンリー少年をバレないように匿ってるマーサ叔母さん。スタンリーはクスリをやるとイカレてヤベェことするから、近づいてくる女どもをマーサ叔母さんが血祭りにあげてくスラッシャーなコメディホラー。

邦題の超絶ネタバレ感が凄い!ジャケ通り婆な見た目のマーサさんが暴れまわるのだけど、タイトルからもわかるようにマーサ叔母さんは女装してるだけのおっさん。だから爺婆ホラーかといえば厳密には違うのだけど、この見た目なら問題ないはず!

スタンリーは19歳なんだけど、歳の割には精神的にかなり幼くてやることなすことガキっぽい。欲にも忠実で、若者たちに誘われるままに連れて行かれて薬をやっては突然ブチ切れて暴れ出す。「こいつなんなん?」みたいな感じでみんな逃げてくんだけど、一歩間違えれば本当に殺しちゃいそうな勢いがあって危なっかしい。だから仲良くなりそうな女が現れるとマーサ叔母さんが代わりにナイフで首掻っ切ったりして処刑していく…。指名手配から隠れてんのに殺してリスク増やしちゃ意味ないじゃん…😅

でもまあそのあたりもしっかり理由があって、母親が息子を無菌状態で縛りつけるような感覚でマーサ叔母さんはスタンリーに依存しまくってる。だからスタンリーを外へ連れ出そうとする女たちを指名手配を理由にして殺すことで家に縛り付けてる。しかもマーサ叔母さんはオッサンで別に血縁があるわけでもなさそうなんで、同性愛的な要素も見え隠れするという何とも複雑な心理状態。

凶器となるナイフや拳銃も常に携帯していて、スタンリーへの愛情の裏返しとしての若い女への殺意が表れる時にだけ表に出す。変装も含めて近所には人の良さを振り撒きつつも絶対に自分のパーソナル空間には近づけない。この内面を覆う「武装」を剥ぎ取ったあとに残るキモさとしてのナイフなりなんなりが後半に行くに連れて大きな役割を担っていくのが手堅いところ。

だからマーサ叔母さんのスタンリーに対する母親的なのか父親的なのか恋人的なのか友達的なのか、どこにも綺麗に収まることのないグチャグチャなカオスな「愛情」が多分本作の1番の見どころ。あんまり面白い作品じゃないけど、なかなかキモくて楽しかった!
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