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恐怖の夜のhorahukiのレビュー・感想・評価

恐怖の夜(1963年製作の映画)
3.8
ヴィンセントプライスが、悪いことして、しっぺ返し食らってジャケ画像みたいな顔になるまでを3つのバリエーションで楽しむオムニバスホラー。

3つともナサニエルホーソーン作品の映画化で監督は『地球最後の男』のシドニーサルコウ。2つ目のラパチーニの娘はだいぶ前に読んで好きな作品だったので何か懐かしい気持ちになったし、読んだことない他のも面白かった。


1話目『Dr.Heideggers Experiment』
もうすぐ80を迎える仲良し老人のカールとアレックス。ある夜、カールの家で談笑してたら外で物音が。行ってみると40年間開かれていない扉が勝手に開いている。その扉の奥には40年前にカールとの結婚式直前に死んだ婚約者のシルヴィアの遺体が入った棺が置かれてるのだけど、中を見てみると40年経っているのに死んだときのままの綺麗な状態だった…。

生物を若返らせる謎の液体を見つけた老人2人が自分たちに液体使ってはしゃいだりしてるうちに、死んだ婚約者も復活させようぜ!てな方向に転がり出すロマンス系のゴシックホラー。シルヴィアの死の秘密が明かされるにつれて、覆い隠されていた崩壊の火種が露わになり、40年前で止まっていた時間が動き出す。偽りの過去の上に成り立つ「今」が崩れ去る悲しい作品。


2話目『Mistress rappaccini』
下宿先の窓から見える庭にいつもいる美女。決して庭から出ない彼女とお近づきになりたくて話しかけるも、まともに取り合ってくれない。強引に侵入しても露骨に避ける彼女の口から語られたのは恐るべき秘密だった…。

「触れるもの皆傷つけた」を地でいくスーパーパワー持ち彼女との悲恋を描くロマンス系ゴシックホラー。父親の実験のせいで猛毒体質になっちゃった彼女は、少しでも触れてしまった生物を意思とは無関係に瞬殺してしまう…。本作は究極の箱入り娘的な溺愛を毒として描いてるんだけど、そんな歪みまくった愛情を覆い隠すかのように整序された緑の庭という外観との対比が気持ち悪さを助長している。


3話目『The house of the 7 gables』
妻を連れて実家にやってきたジェラルド。実家には姉がひとりで暮らしてる。ジェラルドの家系は先祖代々呪われており、男はかならず椅子の上で血を流して死ぬ運命にある。姉は、実家に入るな!すぐ帰れ!と忠告するのだけど、実家のどこかに隠されてる金庫に目が眩んだジェラルドは滞在することに…。

実家の土地はもともと魔女の疑いをかけられ処刑された可哀想な人のもの。その疑いをかけたのがジェラルドの先祖で、土地が欲しいがために嘘の疑いをかけ処刑することで奪い取ったんで呪われてるわけです。設定されたゴール地点に向かって少しずつ歩を進めて行くように明かされていく謎と真実の顔。過去からのしっぺ返しという意味では1話目と近いのだけど、果たされなかった過去の願いが成就する暖かさも感じさせられる作品。かなり派手なシーンがあってビックリした。


古典怪奇小説の世界観を幻想的に再現した美術が本当に凄いし、現代におけるリアリティとはかけ離れた寓話的でもある物語に圧倒的な説得力を持たせるプライス含めた役者たちの演技には脱帽。どれも基本的には罪と罰が根底にあるのだけど、2話目はその罪にも変化を加えているし、死に対しても救いとして描いたり、罰として描いたりと面白かった。それでも2話目だけ若干浮いてるよね。
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