真一

金環蝕の真一のレビュー・感想・評価

金環蝕(1975年製作の映画)
3.9
 過熱する自民党総裁選。派閥争い。買収工作。そして業界との癒着ー。日本の権力腐敗システムを、ワクワクしながら学べる「政界エンタメ映画」の決定版です。舞台は1965年当時の永田町。これを観ると、自民党の金権体質がー規模こそ小さくなったとは言えーこの頃から大して変わっていない現実を思い知らされます。

 現実世界では「ポスト岸田」を決める総裁選が目前に迫っています。裏金問題を闇に葬りたい自民の壮大な茶番劇との批判が出ています。そんな今だからこそ、本作品を多くの方に観てほしいと思う。金権政治への怒りを共有しましょう。原作は石川達三の同名小説。

 「寺田派」に属する官房長官の星野は、派閥の資金枯渇に悩んでいた。先の総裁選で寺田首相を勝利に導いたたものの、他派閥議員の買収工作にカネがかかりすぎたためだ。

 そんな星野の懐事情に目を付けたのが、福竜川ダム工事の入札競争で劣勢に回っていた竹田建設。巨額の政治献金の見返りに、工事受注への便宜を図るよう星野に働きかける。政界汚職が勃発した瞬間だった。

 この動きを、政界情報通の金融業者・石原がキャッチする。石原は今回の件をネタに、反りがあわない星野を失脚させようと、関連情報を業界紙記者の古垣に提供したのだった。巨大スキャンダルと、泥沼の権力闘争の行方は如何にー。ざっとこんなあらすじです。

 とにかく、どいつもこいつも骨の髄まで腐りきっています。東大・大蔵省出身で「次世代のホープ」とされる星野も、厳正中立の入札を約束する電力開発会社総裁・財部も、一皮剥けばカネまみれの下衆野郎。こうした連中が繰り広げる「キツネとタヌキの化かしあい」を、本作品は生々しく描写しています。めちゃくちゃ面白い!

 出演は仲代達矢、宇野重吉、三國連太郎、高橋悦史ら。大物政治家や官僚、新聞記者に扮した名優たちの好演が光ります。

 ただ、オチが雑。もう少し捻ってほしかったです。大量の情報を詰め込みすぎており、分かりにくくなっているのも難点。今の時代に合わせたリメイク版を見たいです。
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