彦次郎

THX-1138の彦次郎のレビュー・感想・評価

THX-1138(1971年製作の映画)
3.5
コンピューター管理による25世紀に生きるスキンヘッドな人類を描いたディストピアSF。原作・脚本・監督はジョージ・ルーカスでデビュー作にあたります。
環境が悪くて地下都市で暮らすとかコンピューターが人類を管理するとか精神安定剤を服用することで感情を抑制し仕事させられるとか人類による肉体関係は禁止し人口管理されている等既視感のあるような設定ですが名前が番号というのはありそうで無かった気もします。特に終盤の追跡の判断がコスト管理というのは個人的には斬新でした。
タイトル名は暗号化と思いきや主人公の男である名称というか番号。そのTHX-1138は女性ルームメイトのLUH-3417は精神安定剤の服用を止めたことでご性交に励むようになるも目を付けられ…というのはなんとなく『1984』の影響を感じました。
影響かは分かりませんがお子様の耳の後ろに付けた学習装置。コンピューターにより知識が脳にインプットされる装置ですが星新一氏の作品に酷似した話があります。穿った見方をすればジョージ・ルーカス氏があらゆる体験してきたSF作品に自身の感性を加えた作品といえるでしょう。
世界観だけのSFではなくロボット警官に追われるカーチェイスは迫力がありアクションとして面白かった部分もあります。デビュー作に作者の真価や原点がみられるというのはよく聞く話ですがSFにアクションという点では後の『スターウォーズ』に繋がっているとも思われます。
ところどころ1971年にしては凄く凝った背景映像がありますが”2004年に『THX 1138 ディレクターズカット』としてDVD化された際には、CGによる背景などの大幅な差し替えが行われ、一部編集も異なるものとなった。”(wikipediaより引用)とのことでルーカスによるアップデートも『スターウォーズ』と同様というところからもルーカスの愛着が窺えます。
さて本作の製作総指揮はフランシス・フォード・コッポラ氏。映画制作会社設立しワーナー・ブラザースと7本の映画製作の契約を結ぶも第1作目が興行的、批評的に失敗し会社が危機に追い込まれるのですがその第1作目がなんと本作。しかし翌年の『ゴッドファーザー』の世界的ヒットにより会社の立て直しに成功するという、これこそ物語にしたら面白そうだと感じた次第です。
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