際限ない暴力と神の怒り
『風の谷のナウシカ』と併せて観賞すると、この2つがありとあらゆる面で一対になっていることがわかる。
ナウシカで描かれた人間の傲慢さは、森を焼き尽くす際限ない欲望へと肥大し、凄まじい暴力描写として画面を埋め尽くす。
一方、自然への畏怖は、人間のエゴに対する「神の怒り」として、人間と対峙する。
よく、「人と自然の共生」が『もののけ姫』のテーマだと言われているが、私はそうだとは思わない。
むしろ、「自然と共に生きよう」という発想そのものが人間の剥き出しのエゴであり、自然とは本来、人間と相容れないものとして描かれているのではないかと感じた。
ナウシカと打って変わって、このあたりから本職の声優よりも役者を起用する傾向になったジブリ作品だが、本作においては、極めて有機的に機能している。
主役2人の声の演技も素晴らしいが、圧巻はやはり美輪明宏と田中裕子だろう。圧倒的な声と存在感で本作の世界をよりディープに拡張している。