晴れない空の降らない雨

メイク・マイン・ミュージックの晴れない空の降らない雨のレビュー・感想・評価

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 『バンビ』(1942)と『シンデレラ』(1950)の間に6本公開された、いわゆる「オムニバス・シリーズ」の3作目。つまり、1つのストーリーではなく、短編や中編をつなぎ合わせたものである。大戦で欧州市場を失ったり物資不足に陥っていたディズニーが、低予算で場つなぎ的に制作した。
 そのなかでも本作や『メロディ・タイム』は、『ファンタジア』のポピュラーソング版とよく言われるように、ジャズや当時のポップスにアニメーションを合わせた多数の短編から成る。一番有名なのはフィナーレをかざる「くじらのウィリー」で、単独でテレビ放映されたこともある。最初の「谷間のあらそい」は、一族どうしが銃で殺し合うストーリーが原因でDVD未収録。次の「青いさざなみ」は幻想的、叙情的で甘美な作品で、元々『ファンタジア』収録予定だっただけあってクオリティが頭1つ抜けている。
 それぞれのセクションの監督を短編の名アニメーターたちが分担している。なかでも、ジェロニミ、ラスク、ジャクソンの3人は、戦後トリオを組んで長編を監督しつづけたことで知られている。また、プロデューサーのジョー・グラントも超有名なストーリー・マンであり、なんと1990年代まで働いていた。
 
 この時期の作風は、ディズニーのなかでも最もコミカル、あるいは前衛的だ。幻に終わったダリとの共作『デスティーノ』も、この頃の作品である。ちなみにウォルトの甥ロイの指揮のもと、ダリが遺したストーリーボードをもとに制作、2003年に公開されている。本作では、ロトスコープを用いた「2つのシルエット」や、悲恋の歌に乗せて抽象的な風景画が展開される「あなたなしでは」などは特に珍しいタイプの作品といえる。背景がコンセプトアートそのままのように見えるときがあり、メアリー・ブレアが描いたと思しきものも見られる。
 オムニバス・シリーズは高画質で観ることができないうえ重要な作品でもないので、ディズニー参りを始めたときは最初の2作品『ラテン・アメリカへの旅』『三人の騎士』だけ観て飛ばしてしまっていた。でも、せっかくなのでコンプリートすることにした。しかし、さすがに退屈する……ので、休み休み鑑賞。すでに気力が失せかけている。