アニマル泉

残酷ドラゴン 血斗竜門の宿のアニマル泉のレビュー・感想・評価

4.5
キン・フーが「007 シリーズ」に反感を持っていて、政府お墨付きの殺しのライセンスでヒーローになるなんておかしい、スパイは表には出ないものだ、という信念で作ったという出世作。荒野の一軒家が舞台。西部劇のようだ。マカロニ・ウェスタンに近い。山田宏一が指摘している通り本作と「侠女」は待ちぶせの映画だ。シー・チェンが達人で羊肉麺のどんぶりをこぼさずに飛ばしたり、勘定の銭をピタリと箱に入れるのに笑う。キン・フーはどうも物語の運びが行き当たりばったりだ。冒頭は流刑にされた大臣の子供たちの話かと思えば凄腕の刺客シー・チェンの話となる。さらには女剣客シャンカン・リンフォンの話になる。敵を追いかけると敵の一部は一軒家に戻ってしまう。筋の運びに無駄が多い。そして敵と味方の人間関係の緊張関係が一貫してない。荒っぽいのだ。しかし本作の魅力はアクションに次ぐアクションである。サービス精神があふれている。突然、矢が放たれてアクションが始まる。トランポリンを使った軽やかで華やかな空中戦、スローモーションを使わない無骨なモンタージュがキン・フーのスタイルだ。一軒家は二階建てで正面に大階段があり2階が回廊でつながっている空間が面白い。この一軒家で数々のアクションが繰り広げられる。毒入りの酒が2回出てきて面白い。後半は雲海が眼下に見える高地で戦いが続く。物語がだんだん乱暴になってくる。人物はどんなに距離が離れていても軽々と飛んでしまうので荒唐無稽になってくる。まあそれもアクションでねじ伏せる。ラストシーン、引き画面で鮮やかに首を跳ね飛ばしたのには鳥肌が立った。
アニマル泉

アニマル泉