滝和也

ピグマリオンの滝和也のレビュー・感想・評価

ピグマリオン(1938年製作の映画)
3.8
プリティ・ウーマン
マイ・フェア・レディ
の元祖大元。

如何にこの戯曲が
優れているかは
後の数々のリメイク、
オマージュが証明
しています…

「ピグマリオン」

ロンドンの街角。訛りの強いスラングで花を売るイライザは喋るだけで出身地を当ててしまう言語学者ヒギンズ教授と出会う。彼女はヒギンズの家に押しかけ、美しい英語を習いたいと申し出る。教授はピカリング大佐と共に彼女を上流階級にも通用する様な淑女に仕立てる実験を始める…。

言わずと知れたオードリー・ヘップバーン主演のミュージカル映画マイ・フェア・レディのリメイク元です。こちらは純粋なロマンティック・コメディとして作られた戯曲通りの形です。

ミュージカルかつカラーそして豪奢にした部分を差し引けば、内容や台詞含めてほぼ同じ、この戯曲が如何に優れていたかわかりますよね。

設定として正しい英語がイマイチ分からない私達にも十分な位、変化していくイライザの発声、そして姿。また特訓シーンの言葉の激しさ。スペインの雨は主に平野に降る等の発音練習用の早口言葉とああ、これこれとわかる内容。やはり楽しい作品です。

イライザ役のウェンディー・ヒラーは確かに巧い。美しさも角度や撮り方で後のイングリッド・バーグマンを思わせますが…やはりオードリー・ヘップバーンの輝きには…(笑) もちろんカラーや豪華な演出もあるのですが、その輝きには敵わない…。

またラストの台詞の掛け合いがやや激しくて…。そうなるとわかっていてもちょっと違和感がありますね。また戦前の作品ですから、英国の上流階級と下層民の関係も遥かに隔たりがある気もします。故にやや曖昧さが残るんですよね…。

ヒギンズ教授は大人であるレックス・ハリソンのイメージが強かったんですが、若きレスリー・ハワードも甲乙付けがたい。流石風と共に去りぬのアシュレーを演じた芸達者で監督も兼ねるだけあります。ボンボン的な子供っぽさを併せ持った点も違和感がありません。イライザと釣り合ってますし。

90分台と短い作品ですが、その良さが濃縮されている感もあり(脇役の皆さんの魅力は後作に譲るものの、2人に焦点があっていて)纏ってますね。

この作品の要素は数々のオマージュを生み出し、今もミュージカルで上演される人気作品です。レスリー・ハワードを見たら何となくトム・ヒドルストンに似ています。彼とリリー・ジェームスあたりでリメイクしないかな…。
滝和也

滝和也