ろ

バックマン家の人々のろのレビュー・感想・評価

バックマン家の人々(1989年製作の映画)
5.0

「生きてる限り、親としての心配は尽きない。エンドゾーンはなく、かっこいいタッチダウンでゴールを決めることはないのだ」

少年野球のコーチをつとめる子煩悩な父親ギル。
ある日学校の先生から、特別支援学級への転入を提案される。

ギルの姉ヘレンは娘とそのボーイフレンドに頭を悩ませていた。
すっかり無口になった息子との距離も開く一方で・・・

ギルの妹スーザンは夫とともに、まだ幼い娘に英才教育を施す。
しかし次第に危機感を感じ始め・・・

小さいのにもうこんなことが出来るようになるなんてすごいじゃないか!
あんなに神経質な子に育つなんて、一体誰に似たのかしら?
こどもの手柄は親のものとなり、親は子ども以上に喜ぶ。
こどもの問題は親の責任となり、なんとかしようと躍起になって手を尽くす。
なにかすごいことが出来なければ、みんなと同じようでなければ安心できないのは親の方で、こどもの背中には親の心配と自己満足が張り付いている。

いまは息子も精神科通いだけど、いつか大きくなったらこんなふうにスピーチしてくれるかしらと、息子の将来を思い描くお父さん。
フライボールを落としてしまう息子のためにカウボーイになりきる。
レストランで癇癪を起こす息子のためにゴミ箱に手を突っ込んで探し物をする。
自分はこどもの問題をパパっと解決できる立派な父親なんだ。
そんな理想を追い求めているうちに、次第に家族との間に溝が生まれ・・・
「あなたこう思ってたんじゃないの?カウボーイの真似と少年野球ですべて解決すると。それならあなたが甘かったのよ」
「こどもは電化製品とは違うわ。欠陥製品の保証書はないのよ」

「黙って出て行くから!」とわざわざ宣言して家を飛び出すジュリー。
2度と帰ってきなさんなと怒りまかせに言うけれど、すぐ思い直して「いつでも帰ってくるのよ、困ったら電話しなさいよ」と後ろ姿に向かって叫ぶ母ヘレン。
キッチンは焦げたフライパンの匂いがする。娘のボーイフレンドは「車の運転や釣りにも免許がいるのに、どうして父親は誰でも無免許でなれるんだろう」とぼやく。

親だからこうでなくちゃいけないなんてことは一つもなくて、だからこそどんなふうに育てていけばいいのか手探りで悩みながら、もがきながら進んでいく。
「ただ回るだけのメリーゴーランドなんてつまらないじゃない。上がったり下がったり、スリルのあるローラーコースターの方がずっとたのしい」
顔を覆いたくなることだってあるけれど、目を開けてしっかり見れば、そんなに悪いもんじゃないかもよ?
おばあちゃんの言葉がずしっと響くクライマックスでした。


( ..)φ

今朝話したばかりのトピックだったり(親はこどもの嬉しいこともトラブルも自分と切り離して考えるのが難しい)、最近の私の家の事情と重なることも多すぎて(精神科、ギャンブル依存・・・)、実際に交わした言葉もそっくりそのままセリフとして出てきたりして、もうこれはうちの家族の話じゃないかと思ってしまうぐらいタイムリーな映画でした。
こんなに揺さぶられて大号泣するなんてパッケージからは想像できなかったな。すごくよかったです。
ろ