90年代のギャングスタ・ラップ・ブームを皮肉った風刺的コメディ映画で、日本ではVHSソフトのみのビデオスルー(今回は北米版BDで鑑賞)。ギャングスタ・ラッパーを目指す中流家庭育ちの青年アルバート(クリス・ロック)が、地元のナイトクラブ・オーナーでもある犯罪王ガストの投獄を機にそのネームバリューを騙って仲間とともにギャングスタ・ラップ・グループ「CB4」を結成し、無謀なハードコアさ故に一躍人気グループとなるが、脱獄したガストの復讐や地元の政治家による妨害などトラブルに巻き込まれてゆく。本編はモキュメンタリーとして展開され、冒頭でアイスTやアイス・キューブ、イージーEといった当時のギャングスタ・ラッパー張本人らのほか、パブリックエネミーのフレイバー・フレイブ(まだわかる)、ハル・ベリー(何故？)、シャキール・オニール(謎)、バットホール・サーファーズ(意味わからん)といった著名人がインタビュー映像でカメオ出演している。演出面ではヒップホップに関する小ネタが多く、開幕のUNIVERSALロゴ映像から、オールドスクール・ヒップホップ定番曲であるダグEフレッシュ＆スリック・リックの「THE SHOW」が流れ、70～80年代ヒップホップに関するアイテムの数々が”ヒップホップ・ヒストリー博物館”的な映像として映し出されるのが感慨深い。収監された刑務所の独房棟番号「Cell Block 4(４号棟)」を由来とする「CB4」自体は、かの「N.W.A.」を強く意識しており、CB4のメイン曲「Straight Outta LoCash」はN.W.A.の代表曲「Straight Outta Compton」のモロパクリで、リリックは違えど楽曲のトラックやミュージックビデオの構図など似通ったパロディとなっている。また、MCハマーとC+Cミュージックファクトリーをミックスしたような架空のアーティスト「ワッキー・ディー」が登場したり、アルバートの夢の中で出てくる「ヒップホップ老人ホーム」に年老いたフレイバー・フレイブのような爺が登場するなど、ヒップホップ・ファンなら笑えるシーンが随所にある。映画方面の関連作として、雑誌の表紙を飾るCB4が映画『ジュース』の様であったり、クライム映画『ニュー・ジャック・シティ』でプーキー(クリス・ロック)がクラックを吸うシーンのセルフパロディがあったり、のちにバカ映画『プーティ・タン』でクリス・ロックと共演するランス・クラウサーがチョイ役で出てたり、エンドロール後に登場するアイザック・ヘイズとクリス・ロックのやり取りのシーンはブラックスプロイテーション風刺映画『ゴールデン・ヒーロー 最後の聖戦』での1シーンのオマージュだったりもする。サントラ参加アーティストも豪華で、パブリックエネミーやブギ・ダウン・プロダクション、ビースティーボーイズといった大物ラップ・グループ勢のほか、P.M.ドーンやブラックストリート、トレイシー・スペンサーといった当時人気のR&B勢も起用している。CB4の楽曲はステッツアソニックのダディーOとコンプトン出身の元ギャングスタ・ハイＣがラップを担当。さらにCB4版「ラッパーズ・ディライト」ではクール・モー・ディーも参加している。ほかにも、犯罪王ガスト役として、エディ・マーフィーの実兄チャーリー・マーフィーや音楽番組「ビデオ・カウントダウン」のホスト役には、「In Living Color」ファミリーのトミー・デビッドソン(ノンクレジット)が出ていたりして、あまり万人向けではないもののヒップホップやブラックムービー好きにはたまらないマニア向けのカルト映画となっている。

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サントラだけヒットしたイメージがあるけど、映画も面白い。

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