彦次郎

和製喧嘩友達の彦次郎のレビュー・感想・評価

和製喧嘩友達(1929年製作の映画)
3.6
共同暮らししているトラック運転手の青年留吉と芳造のもとに身寄りのない娘お美津が転がり込むことで始まるサイレントドラマ。リチャード・ウォレスなる監督の『喧嘩友達』の日本版ということらしいです。
蜘蛛は雄どうしだと静かで雌を入れると一気に騒がしくなるという性質があると聞いたことがありますが本作もそんな感じで家事をしてくれるお美津を巡ってタイトル通り喧嘩となります。ここから殺人にも淫靡にもなりそうな展開(小生の発想がそれしかないのもある)ですが、そんな喧嘩も実は学生岡村とお美津が相思相愛であったことを知り決着という微笑ましさ。ウォレス版がどうなのかは不明ですが監督小津安二郎氏の人柄というのが反映されている気がします(こちらの勝手な思い込みだけど)。
元々は77分の内容でフィルムも紛失されていた幻の作品でしたが1997年に14分の短縮版が発見され後世の残ることとなりました。14分というとずいぶん短くなったようですが寧ろ無駄な要素を削ぎ落したことでシンプルで良かったです。個人的には列車に乗るお美津と岡村を見送る留吉・芳造の場面は心に爽やかな風がふくような心地になれました。
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