【愛の磔】
終盤の、母(菊池桃子)の説諭を待つ迄も無く、本作主人公(山本美月)は徹底して受動的であり客体的だ。
海岸線に於ける伊野尾慧に手を掴まれ 牽引されるさま。
病室に於ける真剣佑に片腕把捉されるさま。
挙げ句夏祭り、彼等に右手左手各々を掴まれ身動き封じられるさまは磔刑の如しで実に象徴的である。
その主体性無き主人公行動は、永野芽郁の戯れ言や 『色白がタイプ』等 噂次元の話を、精査無くただ鵜呑みする紋切り思考の愚の表徴でもあるだろう。
それは『内面ピュアなのにビッチの“レッテル”を貼られている』事に憤っていた筈の主人公が、自身も同様に他者を簡便テンプレート化し、思考/選択の主体性を放棄している事の証左に他なるまい。
他者に憤る前にまず自らを見よ-。
その事に気付いた山本美月は、何にも頼らずに、何も使わずに、迷い無く、海辺を駆けてゆく -自分の力だけで-。
《劇場観賞/観賞券当選》