古代エジプトでは、夫が死んだら妻は生贄として捧げられたという。
夫が死んだならば、妻も死ななければならなかったのだ…。
近代ではそこまでのことはないとしても、特に一昔前の未亡人は古代エジプト並に自由に過ごす権利がなかったのだろう。
噂の怖さと人々の悪意に、こちらまで苦しくなる。
周りの意見や嫉妬などを聞き入れてしまったせいで、自らの幸せを逃しては元も子もない。
それは家族であってもである。
結局みんな自分勝手なのだから、周囲がかざしてくる「普通」に怯える必要はないのだ。
何か物に映る主人公の顔が印象的である。
鏡、ピアノ、そしてテレビ…。
それぞれの場面での様々な表情をとらえ、間接的な方がよりドラマティックに感じる。
そしてダグラス・サーク監督は、音楽の使い方が素晴らしい。登場人物の心の動きとちゃんと連動した、その場に適した音楽を使うためより感情を揺さぶられる。
人の弱さと無神経さにおののかされながらも、真の愛のために奔走する二人のピュアな姿にやはり心を動かされた。
障害のある山あり谷ありなラブストーリーで、ベタに感じるが大袈裟過ぎない視覚的演出と少々仰々しい音楽の演出がむしろちょうど良いのだと思う。