馬井太郎

飢餓海峡の馬井太郎のレビュー・感想・評価

飢餓海峡(1965年製作の映画)
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伴淳三郎の起用は、方言での地理的スケール感と貧困感のためばかりではなかったろうが、主観としては、物足りなさがある。
内田吐夢は、そんな伴を追い込んだ、と、朝日土曜版「映画の旅人」で興味深く読んだ。吐夢映画は、相米慎二のそれと似て、いや後者が真似たのか、長回しが多い。セリフを探しながら尋問に答えるように見えた三國連太郎が、かえってよく見えたのである。

①余裕を見せる三國連太郎と、留置所の格子の中で、伴淳三郎はふたり差しで対峙する。三國が舟で下北に上陸したときに焼き払った舟の灰を、伴はずっと大事に保管していた。それを懐からだして、三國の前に置く。「これは、何だと思いますか?」

② 伴淳三郎が、東京に行くとなった時、押し入れなどを引っ掻き回して、あるはずの金を探す。旅費が足りないのだ。
微々たる金を懐にして、家を出ていく伴に、東京行きを反対していた上の息子が弟に金を手渡して、「持って行ってやれ」、という。弟は、家を飛び出して、坂道を下って行く父親伴を追いかける。
このふたつのシーンが、心に焼き付いて離れない。