馮美梅

アウトレイジの馮美梅のレビュー・感想・評価

アウトレイジ(2010年製作の映画)
3.0
とにかく、劇中「なんだこのやロー!、バカヤロウ!」の連発。
いいたいことがあってもうまく言えない時、虚勢を張りたい時に出てくるんだか…それがまたあまりにもあっちこっちでいうもんだから、それすらもコミカルというのか…(笑)

一言でこの作品を表現すれば「激しい」です…(笑)

やくざ映画?なんですけど、そこいらのスプラッタ作品よりもホラーかもしれない?

皆、悪いです。クサイ演技で悪を謳歌しています。
指つめるのにカッターで切れって…無理だろう…無理と言いながらもやってみる…痛い!でも当然切れない、それが妙におかしい…観客も見てて「そりゃ無理だろう」と思い、劇中でも「こんなんでは無理!ちゃんとしたもん出せ!」みたいなことをいうんだけど、却下され…

だから劇場内も「うわ!痛い!」と思いながらも笑ってしまう。

恐怖と痛みの後には、なぜだか必ずと言っていいほど笑いがある作品。

それぞれの悪さ加減がとても興味深い作品でした。

その中でも特に石橋蓮司さんと中野英雄さんは、散々な目にあわされ度ナンバー1だと思いますが、その悲惨な目にあってるにもかかわらず、爆笑しちゃうんですよね~。(具体的にどうだなのかというのは是非劇場で作品をご覧になって確かめてください)

加瀬亮さんはキレて足蹴にするシーンは、なんだかタップダンスをしているような華麗さを感じましたし、英語を淡々と話すシーンも、激しくはないんだけど、不気味さが漂っていました。

国村隼さんはのらりくらりとした感じ、それをサポートするのが杉本哲太さんが良いコンビというか…。

たけしさんと椎名桔平さんとの関係、椎名さんは色っぽかったです。でも最後が凄かった。観てるこちらまで苦しくなってきちゃいました。

北村総一朗さんと小日向さんは悪っぽくないんだけど、いざという時にみせる凄味が迫力ありました。

以前A-Studioに出演した時にこんなことをお話していました。

よくね外国に行くと、「あなたの暴力映画で社会の影響を考えたことがありますか?」って言うわけね、いろんな人が真似をしたり、そういうことは考えたことはあるけれど、でも俺は関係ないと思うよって、そうしたら、「えっ、なんですか?無責任ですねって」いうから、じゃあね、逆に考えてくれるって、暴力映画がある以上に映画が出来て100年だよ、暴力映画より大半が感動させる映画とか、泣く映画とか、愛情とか友情とか、そういう映画が大半でしょ?その影響はどこに出てるの?影響ないじゃない?今のイランとかイラクとか、いろんな北朝鮮とか、いろんなところで、その映画が影響あったら、まぁアフガンでも皆、平和になるでしょう?アフリカの飢餓なんて絶対無くなるのに、何にもそっちのいい映画が大多数ないじゃない?だから俺の暴力映画だって、影響はないんだよって言ったら…名回答だったな俺は、ガッツポーズ、ざまぁ見やがれこの野郎って、フランスの記者が手を震わせて「…はい」って

確かに、感動する作品、泣ける作品を見ても大半は、一時的に「これじゃだめだよね」と思う感情が芽生えたとしても、それで世界が優しくなるわけでも、平和になるわけでもない、反対に残酷な、救いようのない作品を見たからと言って、皆が「よし、おれも人殺しになってやろう」とか思う人なんて本当に皆無に等しいと思う(中には歪んだ人間もいるかもしれないけれど)自分はこうだと思っても、それでも「私1人なら」という考えで行動して、そういう人間の集合体になって、群集心理になってしまったしたり…。

それぞれが反面教師になったり、ストレス発散になったりするもので、色々考えるきっかけになる、それが映画の醍醐味なんだと思うんですよね。作品を見てどう感じるかは人それぞれなんですよね。

この作品だってある意味、救いようのない話だし、だからと言ってやくざの世界がこういうもんだ、なんてこと思い込むこともナンセンスなんですよね。

自分がしたくてもできないことをスクリーンを通してやってくれているんだと思いますね。
馮美梅

馮美梅