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何がアリスに起ったか?のhorahukiのレビュー・感想・評価

何がアリスに起ったか?(1968年製作の映画)
3.7
切手帳は大事!

9月は爺婆⑫

金持ちだったはずの夫が何も残さず死んだんで「私はどうやって生きてけばいいの…」と悩んだクレア婆が、家政婦を雇っては投資詐欺を持ちかけ大金ふんだくって殺害。そしてまた新しい家政婦を雇って…の無限ループ戦法を実践するサイコスリラー。

『何がジェーンに起ったか?』構文をそのまま使ったタイトルからして、アリスお婆ちゃんがベイビージェーンハドソンみたく暴れまくるのかと思いきや、暴れるのはクレア婆というサプライズ。ちなみにプロデューサーは『何がジェーン…』『ふるえて眠れ』のロバートアルドリッチ。

それじゃあアリスって誰なのかっていうとクレア婆宅に新しく雇われる家政婦の名前。クレア婆のところで以前に働いていた友人が消息不明になったので、悪事を暴くためにアリス婆が家政婦のフリして潜り込む。アリスvsクレアという『何がジェーン…』『ふるえて眠れ』に続いてこれまた婆vs婆ものとかアルドリッチこのネタ好きすぎやろ🤣

アルドリッチ監督作のような味が出なくなるまで設定を噛み締め、そこからテコ入れ的な情報の上乗せを繰り返すことでその全てをクライマックスの深みとして収束させる教科書的華麗さは本作にはなくて、前2作と比べてしまうとそこは残念。だけど、クレアもアリスもビッキビキにキレまくって口論する演技の鬼婆感が凄くて、見てるだけのこちら側まで嫌な気持ちになってくる迫力があったから面白かった!2人とも『何がジェーン…』に負けず劣らずな名演技!

クレア婆は埋めた死体の上に松を植えてるんだけど、その「死の上に成り立つ生」を体現した気持ち悪さは当然「死」によって生かされてるクレア婆の現状そのもので、何度も挿入される松が並ぶ庭の光景の一見綺麗で長閑かな雰囲気の奥底の真実に切り込もうとするアリス婆を自然と応援してしまう。過去に殺した家政婦が世話をしてた野良犬が何度もこの松に隠された真実を告げるかのように吠えるのだけど、それは殺された家政婦の無念の代弁でもあるわけで過去からの告発としてクレアを追い詰めていくのも良かった。

襲うシーンではクレアは赤、対峙する相手側は青を纏う統一性も面白いし、狂気の発露で流れる弦楽器のような聞くものを不安定にさせる曲とか、クレア婆のサイコっぷりを実感させる高笑いとか魅せたいところに意識的に規則性みたいなのを持たせてるのも生真面目感出てて良かった。そしてラストに訪れる虚しさも良い余韻!
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